森保Jの構造は不安定。
見せ場は作っても日本ペースは作れない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 コパ・アメリカ第3戦。日本が準々決勝に駒を進めるためには、このエクアドル戦に勝利する必要があった。試合は前半15分に日本が先制。エクアドルが前半35分に追いつく展開となった。

エクアドル戦で先制ゴールを決めた中島翔哉だが、課題も多いエクアドル戦で先制ゴールを決めた中島翔哉だが、課題も多い 岡崎慎司(レスター)に代えて上田綺世(法政大)を投入した最初の選手交代は後半21分。ゴールを欲するチームとして遅い交代とは言えないが、残る2回の交代は問題だった。

 三好康児(横浜F・マリノス)を下げて安部裕葵(鹿島アントラーズ)を入れた2度目の交代は後半37分。板倉滉(フローニンゲン)を下げて前田大然(松本山雅)を投入した3度目の交代は後半43分だった。タイミング的に、それぞれ10分遅い交代と言うべきだろう。その監督の采配から、絶対に勝ちたいという意欲をうかがうことはできなかった。

 意欲はあったのかもしれないが、時間が遅れたのは、投入する選手への期待値がさほど高くなかったからとも考えられる。しかし、仮にそうだとしても、交代は早めに行なわれなければならなかった。可能性を探る努力をしなければ、もし終盤ゴールを奪ってベスト8入りを果たしたとしても、次の試合の目処は立たない。

 試合の数が増えるほど可能性が減るサッカー。森保一監督にはそうした傾向がある。今年1月に行なわれたアジアカップの戦いがまさにそれだった。試合数をこなすほど、選択肢は減っていった。

 今回は3試合が精一杯に見えた。新たな可能性が見えなければ4試合目、5試合目には期待しにくいものだが、その可能性は3戦目の終盤の戦いでほぼ潰えていた。

 森保監督は今回のコパ・アメリカに、最大、何試合を戦うつもりで臨んだのだろうか。ベスト8が目標なら最低4試合を戦うことになる。毎試合、勝利を追求しながら4試合を戦う戦力を同時に発掘していかなければならない。目標値から逆算して目の前の試合を戦う必要があるのだ。

 結局、小島享介(大分トリニータ)、菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)、渡辺皓太(東京ヴェルディ)、伊藤達哉(ハンブルガー)、松本泰志(サンフレッチェ広島)の5人には、出場機会が1分も与えられなかった。

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