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ベトナムにシュート数で劣った森保J。
苦戦の原因は敵の健闘ではない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 ところが日本は攻めあぐむ。引いた相手にどう対処するか。共通理解のないサッカーを繰り広げた。常套手段であるサイド攻撃の精神はゼロ。原口元気(ハノーファー)はなぜ外に開かず、真ん中にポジションを取るのか。ディフェンダーに背を向けてプレーしようとするのか。まったく理解できなかった。

 初めてつかんだチャンスは、なんと前半24分という遅さである。その原口が、北川航也(清水エスパルス)から受けたパスをコーナーキックにする。キッカーは柴崎岳(ヘタフェ)。そのボールを吉田麻也(サウサンプトン)がヘディングで叩き込んだかに見えた。

 しかし、ゴールを決めた吉田に笑顔はない。今大会、初めてVARが導入された瞬間だった。吉田にハンドが認められ、判定はノーゴール。それまでまるで面白みに欠けていた試合は、これを機に活気づいた。

 28分。ベトナムのエース、グエン・コン・フォンが左サイドから単独ドリブルで突破。ゴール右ポスト脇に、際どいシュートを放つ。

 日本はその1分後、右をえぐった柴崎の折り返しを冨安健洋(シント・トロイデン)がヘッド。相手GKがこれをストップしたが、日本の対戦相手のGKの際どいセーブを見たのは久しぶりだった。少なくとも前戦のサウジアラビア戦では一度も拝むことはできなかったのだ。

 ところがこのシュートシーンは、この試合で一番のビッグチャンスになった。さらに、日本はシュート数でもベトナムを下回ることになった(11本対12本)。

 だが、森保監督の試合後の分析は独善的だった。「決定的なチャンスを何度もつかんだ。いつも言われていることですが、決定力さえあれば......」と、述べたが、事実誤認もはなはだしいとはこのことである。日本は何となく押していたにすぎない。

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