日本代表は新監督を決める前にやることがある (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 プレビューとレビュー。日本のサッカー界(スポーツ界)に多いのはプレビューだ。W杯前は、「さあ、始まりますよ」と、楽観的な見通しで前景気を煽ろうとする。コロンビア戦を前にすれば、「2点差以上で勝利を収めれば……」と、少ない可能性を、大きく伝えようとする。ならば試合後は、それと同じぐらいのボリュームで、レビューを伝えるのが、あるべきバランスというものだ。

 W杯の反省検証番組を放送するテレビ局は、果たしてどれほどあるだろうか。放送されないであろう理由は、本当にそれをすれば、自分たちがそれに加担していることが、明るみに出るからだろう。

「アギーレ!」とともに、よく見かける言葉の中に「方向性は間違っていない」というものがある。ザッケローニの路線は継承されるべきだとする声だが、これも、為政者を楽にする言葉だ。

 原さんは攻撃的サッカーを信奉する人で、4年前の新監督探しも、そのコンセプトに基づいて行なわれた。日本サッカー史上、あるコンセプトに基づいて代表監督探しが行なわれたのはこれが初。ザッケローニはこれまでの監督とは異なる意味を持つ監督だった。

「ピッチを広く使い、高い位置からプレスを掛けボールを奪うサッカー」とは、原さんが具体的に用いた言葉だが、いま、このご時世において、そうでないサッカーは存在するだろうか。守備的サッカーというものは、ほぼ消滅した。攻撃的サッカーは当たり前。それは死語にさえなりつつある。

「パスを繋ぐサッカー」も、まあ、当たり前だ。日本のパスワークは良くも悪くも独得のものがあるが、パスを繋がないサッカーを目指そうとしている国は、一つもないと言っていい。

 そうした中で「方向性は間違っていない」と言われても、方向性の中身が見えないので、反応のしようがない。ザッケローニの路線を継承すると言われても、路線の中身が見えてこない。それはおそらく「攻撃的なパスサッカー」になるのだろうが、そうではないサッカーを目指す方が大変だ。

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