名波浩の助言。ザックJの失点癖は解決できる (3ページ目)

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 一方、守備はコスタリカ戦と同様に、緩慢な対応で失点を重ねた。立ち上がりは日本のハイプレッシャーがはまっていたように見えたけれども、それはザンビアが様子を見ていたに過ぎなかった。ザンビアは「これならいける」と手応えをつかむと、パスを効果的につなぎはじめ、サイドバックも果敢に攻撃参加してきた。そのうえ、頻繁にサイドチェンジを繰り返すなどして、スピーディーかつワイドな展開で日本ゴールを強襲した。

 結局、日本はプレッシャーをかけながらも、アフリカ人特有のリーチの長さとか、いわゆるフィジカル能力の高さに翻弄され、「獲った」と思ったボールを奪えなかったりして苦しめられた。先制されたシーンでも、日本はゴール前に人がそろっていて、ザンビアからすれば攻撃スペースはほとんどなかった。しかしそういう状況の中でも、アフリカのチームというのは、ゴールを決めることができる。その認識が甘かった。

 CKから奪われた2失点目も、相手が“変化”をつけてきたことに対応し切れなかった。本来であれば、いちばんニアサイドにいた選手が、事前に研究していたものと違った動きを見せた瞬間に、「何かあるな」と思って、より気を引き締めて対応しなければいけなかった。だが逆に、動きが止まってしまって、豪快なシュートを決められた。セットプレイにおける“変化”は、W杯本番になれば、一層増える。それに対して、臨機応変に対応できる準備を整えておくことも大切だ。

 繰り返しになるけれども、コスタリカ戦でもそうだったように、少しでも甘い対応をすれば、世界では簡単にやられてしまう。「これぐらいでいいだろう」といった感覚で対処することがあってはいけない。過去4大会での日本の敗戦も、それが原因だった。その過ちを繰り返さないためにも、常に相手に隙を与えない対応を心がけるべきだ。

 第一、「優勝する」と口にしているチームなのだから、中途半端な対応ミスから失点して負けることがあってはいけない。ひとりひとりが楽をすることなく、90分間、集中して戦うことをイメージしておくべきだ。

 ともあれ、コスタリカ戦、ザンビア戦における守備の問題や、ザンビア戦で苦労を強いられたアフリカ人特有のプレイスタイルなど、テストマッチで発見し、体感できたことは良かった。それぞれ、選手個々、チーム全体の意識を変えることで解決できる問題。残り時間は少ないものの、日本代表にはテストマッチで出た課題を克服して、本番を迎えることを期待したい。

プロフィール

  • 名波 浩

    名波 浩 (ななみ・ひろし)

    1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍

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