サプライズ選出の大久保嘉人、ザックはこう使う (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 Iio Atsushi
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そこで気になるのは、起用法である。

 最も考えられるのは、試合途中から1トップの位置に投入する「スーパーサブ」としての起用法だ。本人も「ベンチでいい。途中から流れを変える」と意気込んでいる。

 もちろん、スタメンでの起用も考えられるが、現チームの1トップには「スペースを作ったり、マークを引き付けたりして2列目を生かす」「第1ディフェンダーとして追い込むサイドを決める」といった役割が課せられている。それこそ戦術理解と連係、継続が必要で、そうした役目に忙殺されるより、勝負どころで投入し、ゴールを奪うことに専念させたほうが、大久保の持ち味が生かせるだろう。

 ザッケローニ監督は今回、「ふたつ以上のポジションをカバーできることも選考の基準に入れた」と語ったが、まさに大久保もユーティリティーさを持ち合わせた選手だ。

 前回W杯やヴィッセル神戸時代、また唯一招集されたアイスランド戦では左サイドMFを務め、川崎では数試合ながら右サイドでもプレイしている。ボールが収まり、簡単に失わず、ミドルシュートを備えている点を考えれば、トップ下での起用も視野に入れていい。

 現状のメンバーを見ると、本田のバックアッパーがいない状態だ。本田が欠場したり、本田を右サイドで起用したりする場合、香川をトップ下にスライドさせるのが第一案だが、大久保のトップ下起用は、第二案になり得るものだ。

 純粋なトップ下である必要はない。例えば、東アジカップでトップ下も務めた大迫と、2トップ気味にタテ関係で並んで、互いにトップ下とトップを行き来する、変則的な2トップにしてもいい。

 いずれにしても、大久保の選出によって、前線の組み合わせに、これまで以上の幅が生まれたのは間違いない。

 昨年11月の欧州遠征でオランダ(2-2)、ベルギー(3-2)と好勝負を演じたチームに、異分子が放り込まれ、どのような化学変化が起こるのか――。

「世界を相手にやれる自信が本当にある。今はあの舞台(W杯)で点が取れそうな気がすごくする」

 そう自信満々に語る大久保なら、ラストピースとしての期待に応えてくれるはずだ。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る