【日本代表】酒井宏樹「僕は、(内田)篤人くんのようなプレイはできない」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

 ひとつひとつのプレイに対して、内田との優劣は気にしないというか、気にしても仕方がないという酒井。試合に出場したら、自分のできることを精一杯やるだけだという。ただ、内田と自分とを比較してしまう点もある。

「メンタル面です。篤人くんはメンタルが強い。どんな舞台や状況でも何ら動じない。例えば、長い間試合に出られない時期があっても、出番がきたら淡々とプレイできるじゃないですか。そういう姿を見ていると、メンタルが強いのはいいなと思いますし、すごく憧れますね」

 ピッチ上での激しいプレイぶりを見る限り、酒井もメンタル面の強さは十分に兼ね備えているように見える。

「いやぁ~、結構ヤバイです(笑)。ピッチに立ってしまえば、前向きにガツガツいけるんですけど、いざピッチを離れると、いろいろなことを考え込んでしまうんです。試合でうまくできなかったこととか、グズグズと引きずっちゃうんですよ。レイソルのチームメイトだった工藤(壮人)なんかはメンタルの強さが半端じゃなくて、常にギラギラしていた。たとえベンチにいても、『ヒーローになるのは絶対にオレだから』っていつも言っていましたから。そういうスタンスでいられるのが、すごく羨ましい。僕なんか、今は試合に出られないことを、強引にポジティブに考えるようにするのが精一杯です(笑)」

 ともあれ、日本代表では熾烈なポジション争いを繰り広げている酒井。右サイドバックのレギュラーの座を獲得するには、どうすればいいと思っているのだろうか。

「(右サイドバックについては)個々の比較より、監督が満足するラインというのが、コマさん(駒野友一)、篤人くん、僕と、選手それぞれで違う基準があると思うんです。自分がそのラインに達するのはもちろん、1回だけではなく、毎回その基準をクリアすることが重要。そうすれば、試合に出るチャンスは増えてくると思います。そのためには、常に自分の力のすべてを発揮しなければいけないんですが、今はそれが足りていない。だから、僕はベンチなんだと思います。チャンスを与えられるときは、篤人くんが出場停止とか、そういう状況ばかりですから。正直、監督が求めるラインを、まだ越えられていないということです」

 酒井がレギュラーを奪えるチャンスは、振り返れば何度かあった。とりわけ9月に行なわれた親善試合のUAE戦は、直後に控えたW杯最終予選のイラク戦で内田が出場停止。代わりの人材をテストする場だっただけに、酒井にとってはビッグチャンスだった。

「確かにUAE戦では、自分でもレギュラーの座をつかむチャンスだと思っていました。気合いも入っていたし、いいクロスを何本か上げられたと思います。でも、僕のクロスから得点は挙げられませんでした。逆に、その日は左サイドバックでプレイしたコマさんがすごいクロスを上げて、ゴールが決まった。求められるのは、やはり結果なんです。監督も結果にこだわる人なので、アシストのあるなしの差は大きかったと思います。その後もオマーン戦など、チャンスはもらっているのですが、クラブで試合に出ていなくて、試合勘やボールタッチに不安を抱えていることが多かった。試合の中でも出来不出来の波があって、自分はまだまだ安定感がないな、と思いますね」

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