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【部活やろうぜ!】西武・西川愛也が今も高校時代の恩師に指導を請う理由「あの人に教えてもらったら打てる」 (2ページ目)

  • 中島大輔⚫︎取材・文 text by Nakajima Daisuke

【野球だけをやっていればいいという教えではなかった】

 普通の選手なら、ネガティブな気持ちに襲われてもおかしくない。ところが西川は落ち込む暇もなく、すぐに前向きに取り組めたという。その裏には、指揮官の絶妙な手綱さばきがあったのかもしれない。

 筆者は西川が大ケガを負った1カ月後、偶然、花咲徳栄の練習を取材に訪れたことがある。グラウンドは緊迫した雰囲気に包まれ、ピーンと張り詰めている。いわゆる強豪校の練習風景というイメージだった。

 西川にとって、岩井監督はどう映っていたのだろうか。

「当時は怖かったですよ(笑)。怒られるのはチームの雰囲気を乱した時というか。ふてくされたりすると、一番バチンと来ますね。『なに態度に出してるんだ!』みたいな」

 西川や中日に進んだ清水達也、背番号1をつけた綱脇慧の代には不満を表情に出す部員がひとりいて、岩井監督の逆鱗に触れることがたびたびあった。

「そうなると、だいたいキャプテンと副キャプテンの僕が呼ばれて怒られるんです。ちゃんとさせろと。(チームを引き締めるために)たぶん、わざと怒ったりもしていたと思います」

 平日の全体練習は2時間半。限られたなかで、いかに成果を上げるか。岩井監督は常に目を光らせていた。

 それは野球に限った話ではない。授業中に各クラスを見回り、居眠りしている部員を見つけたら、「もう練習させねえ!」とストップ。何がいけなかったかを話し合わせる。

 夜練で片付け忘れたボールがグラウンドに落ちていると、「どうなっているんだ?」と練習を止めた。数々の部員をプロに送り出してきた指揮官だが、野球だけをやっていればいいという教えではなかった。西川が振り返る。

「ボールが1個でも落ちていて、雨が降ったら、そのボールはダメになるわけじゃないですか。そういうことも、今後のために言ってくれていたのでしょうね。人間性を重要視していたと思います」

 高校野球は教育の一環だ。体力や技術を上達させることも大事だが、それ以上に人間としての成長が重視される。その先に、野球選手としての向上もついてくる。

 多くの高校野球部ではそう考えられており、それは真理と言っても差し支えないだろう。一流のアスリートには、知的で、人間的にも尊敬される者が多い。

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