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巨人OB清水隆行が振り返る厳しかった学生時代「打席に立つのが怖いんです」 (3ページ目)

吉田 その頃の東洋大学の成績ってどうだったんですか?

清水 僕のいた4年間で、8シーズンあって優勝は1回だけで、ほぼ2位か3位でした。下の順位になることはなかったです。東都リーグって入れ替え戦があるので、そこは本当に厳しいリーグです。その入れ替え戦は僕は経験せずに済みました。

吉田 4年間で一番大変だったことって覚えていますか?

清水 ひとつには絞れないですね。山ほどあって、10個あっても使えるものがいくつあるか...みたいな話になります(笑)。こういうところで喋らせていただく時って、その心配もしなきゃいけないですから。

 練習の長さや厳しさ、あとはプレッシャーですね。結果が出なかったら日付が変わるくらいまで練習することもありました。あとは、打てなかったりすると「髪を切ってこい」と言われることもありました。

吉田 坊主ですか。

清水 30年以上前の話ですよ。打席に立つのが怖いんですよ。○か×か、絶対に結果が出ますから。例えばチャンスの場面で回ってきて、結果が出なかったら、何かが起こる可能性がある。そうなると正解は結果を出すことではなく、「打席に立たないこと」が一番いいわけですよ。

吉田 なるほど。

清水 チャンスで回ってくると「よっしゃ」ってならないんですよ。僕や今岡真訪さんとか、ずっと試合に出ている選手は受け入れてやっていましたけど。右ピッチャー、左ピッチャーによって出場が決まる選手たちは敏感でしたね。スタメンから外れると「よっしゃー!」って。寮中に響く声で(笑)。

 オープン戦の時なんか、マネージャーが放送でスタメン発表するんですけど、「1番○○、2番○○、3番今岡、4番○○」って。6番、7番あたりが勝負どころなんです。外れた方が「よっしゃー!」って。

【緊張と向き合うメンタル】

吉田 今、試合の大事な場面で緊張する子どもたちって結構多いと思うんですよ。「僕だけかな」って思っているかもしれないけど、大学まで行った人がそういうメンタルだったって聞くと、少し安心するんじゃないかな。

清水 緊張もしますし、やっぱり怖さって持ってなきゃいけないと思います。怖い物知らずっていうのは、悪い意味では無責任になってしまうこともあります。失敗する怖さを知ったなかでやることが必要なんだと思います。怖いってことがダメなわけではないし、緊張することもダメではない。それは受け入れていくべきだと思います。

 緊張しないためにはどうしたらいいですか? ってよく聞かれますけど、緊張しない人なんていないと思うんですよ。緊張するのは、それだけ自分にとって大事なものだから。いい加減に考えていたら緊張なんかしませんから。今、自分がどれだけ大事なことに臨んでいるか、その思いがあるから緊張する。それを受け入れた上で「どうするか」を考えるべきです。結果を出すために、確率を上げるための考え方を自分で持っておく必要がありますよね。練習して、考えて、臨んでいくなかで見えてくることがあると思います。たとえば「ヒットを打ちたい」「ホームランを打ちたい」って、誰でもそう思う。

 でもヒットを打つ確率を上げるためには、「このへんのボールを打つ」とか「構えの段階でこういう意識を持つ」とか。確率を上げるための"何か"を、自分なりに持っておくといい。結果はコントロールできないですけど、その過程の部分はコントロールできる。そこにフォーカスすれば、緊張していても対応できると思います。

【Profile】
清水隆行(しみず・たかゆき)/1973年10月23日、東京都足立区出身。1995年にドラフト3位で巨人に入団。2002年には最多安打のタイトルを獲得するなど活躍し、2009年に現役を引退。現在は野球解説者として活動している。

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