【ドラフト2024】注目野手を名物記者が語り尽くす 超目玉の明大・宗山塁は「守備に色気がある」 慶大・清原正吾の指名は? (3ページ目)
【清原正吾のプロ入りに抱くロマン。底知れぬ可能性に期待】
加藤 ズバリ、慶応大学の清原正吾選手はどうですか。
菊地 これはむしろ僕のほうが聞きたいぐらいです。指名されるのか否か。でもこの1年間、清原和博さんの長男というところで注目されるなか、結果を残して成長を見せてくれているじゃないですか。加藤さんはどう見ています?
加藤 僕もスカウトの方々にいろいろ取材してはいるんですけど、現状、清原選手の獲得に前向きな球団には出会えていないです。やはりまだ、清原選手のパフォーマンスを見定めている段階なのかなと。ただ、僕がスカウトだったら絶対に取る!
菊地 お〜、絶対ですか!
加藤 はい。だって、中学・高校で野球やってないんですよ!? 6年間のブランクがある選手が、部員が200人近くいる慶応大野球部のなかでトップ・オブ・トップの4番を張っているわけですよ。しかも、今年の春季リーグでベストナインにも選出。8月には東京6大学野球連盟選抜と日本ハム2軍の試合で、エスコンフィールドの左翼ポール際のホームランエリアにズドンッ! 対戦相手が育成選手といえど、なかなかあの打球は打てませんよ。「大学生=即戦力」と思われがちですけど、選手によってはそうではなく、まずは試合経験を積ませて、たくさん打席を与えてあげれば、化ける可能性は高いんじゃないかと。
菊地 かつて、早大ソフトボール部からプロ野球の世界に入った大嶋匠(元日本ハム)という選手がいましたよね。
加藤 そうそう。大嶋さんのように、野球とは無縁の競技人生を送っていてもプロ野球という世界に巡り会うこともあれば、清原選手のように、高校までバレーボールやアメリカンフットボールに熱中し、大学から硬式野球を始めた選手がプロ注目の存在になるという。それってすごくスポーツ界にとっては大きな夢であり、ロマンだと思うんです。日本のスポーツ界はもっと、マルチスポーツが持つ可能性にフォーカスしてほしい。
菊地 清原選手はマルチスポーツ経験者であることを「自分の武器だ」と言っていますからね。
加藤 けしてマイナスではないということですよ。裏を返せば、他競技を経験することによって、底知れない潜在能力が期待できる。その可能性を秘めている清原選手がプロ入りし、活躍すれば、減少が続く野球の競技人口の拡大にも直結するんじゃないでしょうか。
菊地 「俺も大学から野球始めてみようかな」という人が増えていきそうですよね。ただ、清原選手に関しては、中高6年間、野球から離れていたので仕方がないですけど、東京6大学のピッチャーに対してなんとか対応できている、というのが現状なのかなと。
加藤 そこは否めない。
菊地 ですが、対応できていること自体がすごいな、と思うんです。小学校以来の野球で、140〜150キロの速球や変化球にバットを当てるだけでなく、捉えることもできているわけですから。
加藤 すごいです! もしかするとドラフト会議のいちばんの注目ポイントになるかもしれませんよ。宗山選手や金丸夢斗投手(関西大)が何球団で競合するのか、石塚選手の単独指名があるのか。そして清原選手を指名する球団は出てくるのか。呼ばれるなら支配下か、はたまた育成なのか。すごく楽しみです。彼もプロ志望届を出して、自ら選んだ道ですから、応援したいですね。
(つづく)
構成/佐藤主祥
【Profile】
加藤弘士(かとう・ひろし)/1974年4月7日、茨城県水戸市生まれ。97年に報知新聞社入社。03年からアマ野球担当記者。現在は編集委員。著書に「砂まみれの名将 野村克也の1140日」「慶應高校野球部」(ともに新潮社)
菊地高弘(きくち・たかひろ)/1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数
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