セ・リーグ新人王争いの行方 高木豊は上位チームを支えるリリーフふたりを有力視
高木豊が語る新人王争い セ・リーグ編
シーズンも終盤に差しかかり、個人のタイトル争いにも注目が集まっている。今季の新人王に輝くのはどの選手か。かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏に、セ・リーグ新人王の有力候補について聞いた。
巨人のリリーフとして活躍する船迫大雅 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【巨人と広島のリリーフ、どちらが上?】
――セ・リーグの新人王候補を挙げるとすれば?
高木豊(以下:高木) まず挙げたいのは、巨人の船迫大雅(46試合登板、4勝0敗20ホールド、防御率2.57/成績は9月17日時点。以下同)です。最初のうちは変則右腕ということで使われていたのですが、オールスター明けぐらいからは重要な局面で使われていますよね。今ではブルペンに欠かせないリリーバーのひとりだと思います。
それと、広島の黒原拓未(46試合登板、4勝3敗2ホールド、防御率1.89)ですね。当初は試合が壊れた時に投げることが多く、ロングもできるピッチャーなのでロングリリーフで使われていましたが、そうしたなかで好投を見せていました。ただ、左バッターに対して左ピッチャーを起用する時、森浦大輔やテイラー・ハーンよりも序列は下だと思うんです。
つまり両投手を比べると、より厳しい場面で投げているのは船迫のほうかなと。黒原もすごくよくなってきましたが、新人王レースを考えると、印象がよくて有利なのは船迫だと思います。
――船迫投手はどんな部分が優れていますか?
高木 まずは変則なので、バッターがタイミングを取りにくい。それと、スライダーを多投するのですが(投球割合の約50%)、そこに自信を持っていますよね。この手のピッチャーは、右バッターに対してスライダーを投げるケースが多いので、本来はリスクもあるんです。
というのも、過去の右打ちのホームランバッターたちが、サイドスローやアンダースローのピッチャーと対戦する際にどんなボールを待っているかを聞くと、「腰ぐらいの高さから入ってくるスライダーを待ってる」と言う人が多いからです。それを考えると、スライダーを投げるよりもシンカーなどを投げたほうが打ちにくいと思うのですが、船迫がそれでもスライダーを投げるのは、相当な自信があるからでしょうね。
――黒原投手のいい部分についてはどう見ていますか?
高木 真っすぐに力がありますし、球種が多彩ですね。チェンジアップやカットボール、フォーク、カーブをうまく投げ分けますし、あまり制球が乱れることがない印象です。ただ、「ゾーン内で勝負するピッチャー」なんですよ。ボールの出し入れができるほどのコントロールはまだないので、そこは今後の課題でしょうね。
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著者プロフィール
浜田哲男 (はまだ・てつお)
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。