ヤクルト奥川恭伸は「この1年間はつらいことばかりでした」 戸田球場に生きる悲哀と苦悩、そして希望 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 一軍については「徐々にですけど、いい兆しが見えています」と、はっきりと口にした。

「(一軍は)もともといた場所ですし、早くケガを治して戻りたい。そして戸田にケガで来る選手は、絶対にポジティブな気持ちではないと思うので、樹理さんや近藤さん、大下さんがしてくれたように、僕もできればという思いはあります。そのためにはリハビリから卒業しないといけないので、まずはそこを目指してしっかりやっていきたいです」

 5月6日の日本ハム戦は、3度目の実戦登板となった。予定の50球をきっちり投げきり、真っすぐは最速152キロを計測した。

「次はより実戦に近づけたピッチングをしたいです」と明るい表情を見せた。

 奥川を支えていた原と大下も、登板数、球数を重ねており、一軍復帰に向けて順調に歩んでいる。そして春季キャンプ中に左ヒジ痛で離脱した2年目の山下輝もキャッチボールを再開させた。

【戸田で汗を流す中堅選手たち】

 バックネット裏スタンドの真下では、支配下登録を目指して松井聖が気持ちの入ったティー打撃を行なっていた。松井は中部大を中退すると、独立リーグ2球団に所属後、育成ドラフトでヤクルト入り。今年は一軍キャンプにも初めて参加。オープン戦途中まで一軍にくらいついた。

「育成3年目という自分自身の焦りもあって、結果が出ずにファームに落ちてきたのですが、その時はまだ終わりじゃないんだという気持ちでした」

 松井はそう言うと、チームメイトである奥村展征の名前を出した。

「奥村は僕と同じ今年28歳ですけど、どんな状況でもあれだけの声を出している。その姿を見て、ネガティブになるのだけはやめようと。結果が出ずにへこむこともありますが、戸田ではいろいろな選手がそれぞれの思いで一軍を目指しているので、チームの雰囲気を悪くすることだけはしたくない。支配下登録されるのは一軍に呼ばれる時だと思っているので、いつでも上に呼ばれる準備はしておこうと、捕手だけでなく外野でも対応できるようにやっています」

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