斎藤佑樹が振り返る高校最後の夏、日大鶴ヶ丘と日大三との死闘。今でも忘れない決勝前日の父とのキャッチボール (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 早実は5回、檜垣(皓次朗)の2点タイムリーで逆転に成功します。ところがその直後、僕のけん制ミスもあって招いたワンアウト2、3塁のピンチで真っすぐを指に引っかけてしまい、これがワイルドピッチとなって2−2の同点。さらにバッター(6番の辻浩樹)にライト前へタイムリーを打たれて、逆転されてしまいます。

 そんな一進一退の試合は、早実が川西(啓介)のタイムリーなどで4−3と逆転。1点リードしたまま9回を迎えます。ワンアウト2、3塁から3番の右バッター(牧山智嗣)をインコース胸元のまっすぐで見逃し三振。

 ツーアウトとなってあとひとりというところで迎えた4番の右バッター(内山誠)にもインコースのギリギリを攻めます。ところがこのインコースをえぐるはずのボールが相手の背中ギリギリのところへ抜けて、これがまたもワイルドピッチになってしまいます。早実は土壇場で4−4の同点に追いつかれてしまいました。

 9回裏、試合を決めたのは1年生の佐々木(孝樹/のちに早大で主将、JR東日本)でした。あの試合はたしか途中出場だったと思いますが、ツーアウト満塁で佐々木に打順が回ってきます。佐々木はもともと足が速くて、のちのち夏の甲子園でメンバー入りする選手でした。

 その佐々木が痛烈な当たりで1、2塁間を破ります。僕は延長に備えて準備をしていたのでそのヒットは見ていなかったのですが、キンッという打球音だけは覚えています。この一打で早実がサヨナラ勝ち、日鶴をようやく振り切って決勝に勝ち進むことができました。甲子園まで、いよいよあと1つです。

西東京大会は通過点

 決勝の相手は三高です。前年夏は準決勝で対戦して、メッタ打ちを喰らってコールド負け(1対8)。その年の秋には2−0の完封で三高に勝って僕らがセンバツへ出ましたが、文字どおり、三高とは1勝1敗で、これが3度目の対決です。

 三高といえばバッティングは超高校級というイメージで、小倉(全由)監督はそこを大事にしていると聞いていました。秋に完封されて以来、三高は打倒早実、打倒斎藤の思いで冬の厳しい練習を乗り越えてきたと思います。実際、春の東京都大会では三高が優勝して、関東大会も優勝。すごく強い三高となっての、決勝での頂上対決です。周りは、三高と決着をつける日がついにやってきたと騒いでいました。

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