阪神時代のビッグボス二刀流、3秒2球ノック、夜の街での「仰木マジック」も。春キャンプで起こった伝説の瞬間 (2ページ目)

  • チャッピー加藤●文 text by Chappy Kato
  • photo by Sankei Visual

【期待から落胆が大きかった2人の助っ人】

 キャンプは新外国人のお披露目の場でもあるが、途中で突然いなくなるケースもある。代表例が、1997年に阪神にやって来た元レッドソックスの超大物、マイク・グリーンウェルだ。初来日の際、テンガロンハット、ウエスタンブーツ姿で関西空港に登場して話題になった。

「メジャーからバリバリのスラッガーがやって来たで!」と虎ファンは大いに沸いたが、安芸キャンプを途中で離脱し帰国。その理由が「米国で行なっているサイドビジネスの契約更新」というよくわからないものだった。

 しかもグリーンウェルは「キャンプ中に背中を痛めたので治療したい」と主張。ようやく再来日したのが4月下旬だった。デビュー戦こそ活躍したが、5月に自打球を右足に当て骨折。「これは神のお告げ」と、出場わずか7試合で現役を引退してしまう。「なんや、嵐のように来て、嵐のように去って行きましたなァ......」と語った吉田義男監督(当時)の言葉が哀しい。

 それでも、グリーンウェルは公式戦には出た。なんと、新外国人がキャンプ中に引退してしまったケースがある。2003年、ロッテ入りしたロバート・ローズだ。

 ローズは横浜時代、マシンガン打線の中核を担い、1998年の日本一に貢献。首位打者を1度、打点王を2度獲得、サイクルヒットを3回も記録した超優良外国人である。しかし年俸交渉が折り合わず、2000年限りで帰国していた。 

 それから2年のブランクがあったが、ロッテはそれを承知の上で契約。ローズは鹿児島キャンプにも初日から参加し、フリー打撃ではブランクを感じさせない快音を連発していた。しかし......

 いざ紅白戦が始まるとサッパリ打てず、ローズは思い悩んでしまう。過去に日本球界で輝かしい実績を残しているだけに、なおさら悩みは深刻だった。2月19日、ローズは「野球に対する情熱がなくなった」という言葉を残し、来日から1カ月も経たないうちに退団。キャンプ中に機上の人となった。

 背景には、一緒に来日した家族の意向もあった。外国人が多い横浜での生活は快適だったが、千葉での暮らしにはなじめなかったようだ。四番候補がキャンプ中にいきなり消えたロッテは、この年4位に終わっている。

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