元阪神スカウトが明かす原口文仁、岩崎優の獲得秘話「決め手は生活態度と極秘情報」 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

「大学4年生の時に左手の指先を痛めていたんですよ。だから、大したボールはいっていなかった。それを僕は知っていたので」

 一般的にアマチュア監督は、選手の故障の情報を表に出したがらないものだ。一方、国士舘大を率いた永田昌弘監督(現・国士舘高校監督)と中尾氏は親交があり、話のなかから情報を得た。当時の岩崎は球速135キロ程度だったが、指先のケガが治り、140キロ以上出るようになれば一軍で戦力になる可能性が十分にある。そうした将来が脳裏に思い浮かんだ。

 加えて、経歴からも透けて見えるものがあった。岩崎の出身高校は静岡県立清水東で、野球よりサッカーどころの名門として知られている。岩崎自身、甲子園とは無縁だった。

「肩が"若かった"ことも背景にあるんです。そんなに肩を酷使していないこともプラス材料でした」

 ドラフト後に中尾氏が知ったのは、岩崎が野球を本格的に始めたのは中学時代ということだった。父親の方針により、小学生の頃は野球をせずに水泳で肩の周辺を鍛えた。

 そうして高校、大学で力を蓄え、岩崎は2013年ドラフト6位で縦縞のユニフォームを着る。入団3年目まで先発で起用され、4年目の2017年からブルペンに回った。出どころの見にくいフォームからノビのあるストレートを武器に、勝ちパターンで起用されるようになっていく。ストレートの球速が145キロ前後になった現在、守護神ロベルト・スアレスにつなぐ重責を担い、球界を代表する左腕リリーバーとして大車輪の活躍を見せている。

 大学時代、決して多くの球団が評価したわけではないにもかかわらず、なぜ中尾氏は岩崎の可能性を見出すことができたのか。その裏には、独自の方法があった。

「僕はスピードガンを持たずに見ていたんです。カッコよく言えば、自分の目で見たかった。投げた時の初速と終速の差がなければないほうが、バッターは嫌だと感じるものです。そうした部分が"球持ち"と言われるもので、岩崎にはそれがあるように見えました」

 岩崎や原口のように、プロの目に留まるアマチュア選手たちはいずれも独自のアピールポイントを備えている。 "金の卵"たちが憧れてきた世界でスタートラインに立つ裏には、架け橋となるスカウトの存在があるのだ。

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