2021.07.16

ロッテ佐々木千隼「心が折れた時なんて何回もあった」。期待のドラ1が5年目の覚醒→初の球宴へ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 野球場にテクノサウンドが鳴り響く。Perfumeの『FLASH』。映画『ちはやふる』主題歌の歌詞に乗せられるかのように、投球練習中のスリークォーターが軽やかに腕を振る。ZOZOマリンスタジアムでの試合終盤、この光景が今や定番化しつつある。

 31登板、4勝0敗1セーブ12ホールド、防御率1.06(7月16日現在)。ロッテの5年目右腕・佐々木千隼が前半戦で残した成績だ。開幕当初はロングリリーフや敗戦処理だった役割も、今やセットアッパーまで出世している。

ロッテのセットアッパーとして好投を続ける5年目右腕・佐々木千隼ロッテのセットアッパーとして好投を続ける5年目右腕・佐々木千隼

 結果が出ている要因を尋ねても、佐々木の顔色はどこか冴えない。「うーん、なんなんですかね......」とうなった後、こう答えた。

「以前よりはストレートが強くなっていると思います。そのストレートをキャッチャーが使いどころを考えてくれて、生かせているのが一番大きいのかなと」

 2016年ドラフト時には「新人王の有力候補」と報じるメディアもあったほどで、5年目のブレ―クは遅咲きにも映る。アマチュア野球を取材する機会の多い筆者も、大学時代の佐々木をプロで即戦力になる実力者だと見ていた。だが、当の本人は「そこまでの選手ではないのにな」とさめた見方をしていたという。

「もともとプロを身近に感じていませんでしたから。大学4年の夏の終わりくらいから急に(メディアに)取り上げられるようになって、身近じゃなかったプロがいきなりガッと近くにきた。ギャップがすごくて、『えっ?』という感じでしたね」

 桜美林大時代の佐々木を語る上で、忘れられない試合がある。2016年秋の明治神宮大会決勝戦。佐々木は見ていて痛々しいほどに疲れ切っていた。

 その年の佐々木は、年間通してフル稼働していた。春秋のリーグ戦では通算126回2/3を投げ、夏場は大学日本代表に選ばれエース格として活躍。さらに秋のリーグ戦後は横浜市長杯で2試合に完投し、出場権を得た明治神宮大会では2試合13イニングを投げた。桜美林大は初の決勝進出を果たした。

 登板過多は明らかだった。明治大との決勝戦ではストレートが130キロ台と走らず、シンカーなど変化球に頼る投球に終始。4回まで無失点と粘ったものの、5回に4失点を喫して降板した。佐々木は試合後に「まだまだ実力が足りなかった」と涙を流した。