江本孟紀がセの弱体化に物申す。「ソフトバンクのコーチ人事を学べ」 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 また、野手総合コーチの村田修一や、三軍の野手総合コーチをともに務める片岡治大や金城龍彦など、現役時代にFAで入団した者が5人いる。いわゆる"コーチ手形"の有無は憶測の域を出ないが、FAで選手を獲得する際にそうしたものが渡されていたとすれば、選手の育成にはマイナスに働きかねない。

 あらためて12球団の監督・コーチ人事を見ると、球団ごとに特色が浮かび上がる。現役時代に1度でも所属したことがある者を「OB」とし、全コーチングスタッフにおけるその割合を「OB率」として出してみた(※トレーニングコーチは除く)。

1位:広島=100%、2位:ヤクルト=95%、3位:西武=90.5%、4位:巨人=87.5%、5位:DeNA=85.7%、6位:阪神、日本ハム、ロッテ=85%、9位:オリックス=76%、10位:ソフトバンク=70.8%、11位:中日=68.4%、12位:楽天=47.6%

 基本的にFAの補強を行なわない広島はOB率が100%、引退した選手の面倒見がよく「ファミリー球団」と言われるヤクルトは同95%と上位を占めた。一方、2005年の球界参入と歴史が浅い楽天は"外様"率が最も高い。

 ここで明記しておきたいのは、OBをコーチに就けるのが悪く、外様を起用すべきということではない。

 たとえば11位の中日は打撃コーチの栗原健太、投手コーチの阿波野秀幸など外様の割合が高いが、与田剛監督が楽天時代に一緒だったという"つながり"も見える。スタッフを顔馴染みで固めるのは「お友だち内閣」と揶揄されることもあるが、意思疎通を測りやすいのはひとつのメリットと言える。

 重要なのは、OBや外様という属性ではない。人事が、組織の目指す先につながっていくか否かである。球界の伝統を踏まえ、江本氏はこう話した。

「チームで大事なのは、競争を途切らせないこと。コーチをヨソから獲ってくるにしても、昔チームメイトだったからとか、仲がよかったらとか、依然としてそんなことが多い。そういう人事を選手が見た時、チームにいい影響があるわけがない。監督、コーチも含め、いかにチーム全体を常に刺激していけるか。そういう仕組みがソフトバンクにはある。他球団が旧態依然としたシステムでは、勝てるわけがない」

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