2020.07.05

勝利数「歴代2位」の投手は、
320勝のライバルと競って勝ち続けた

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


 いきなり強烈な話が出た。早口で、低く乾いた声でサラッと語られたから余計に驚く。子どもの頃から肩の力が強くて、体力的にずば抜けていたのだろう。

「まず、体力は持って生まれたもんでしょ? 親からもらったもんだと思いますよ。でもね、ちゃんと鍛えれば肩が強くなる、筋肉が柔らかくなる。僕は中学でおもに陸上をやってましたけど、そうすると、走るにしてもきれいなフォームっていうものをまず教えられますよね?

 こういうことも野球やってる子に教えていかなきゃいかんなあ、という感覚ありますねえ。この間の講習会でも足を引きずって歩いたり、埃(ほこり)っぽい高校生いたしね。そういうのも直していかなきゃ。細かいことやけど」

 米田さんはそう言って両脇を締め、運ばれてきたコーヒーを引き寄せると囁くような声で「いただきます」と言った。その丁寧で上品な振る舞いを見ていたら、さっきまでの緊張が解けた。ただ野球だけをやればいいわけではない、野球以外のスポーツをやればいいわけでもない、普段の生活から直していかないといけない、ということだろう。

「そうそう、普段の生活といえばテレビの影響もあるでしょ? 今の子、いいプレーっちゅうのは横っ飛びのファインプレーだと思ってるね。あれ、怖くないんですよ、横のプレーですから。誰でもできるの。でも、自分の正面に飛んでくる打球が速ければ、恐怖感があって難しい。それをいかに100パーセント捕るかっていうのがいいプレーヤーの条件。

 だから、中学生を教えている指導者には、『ノックで正面のゴロを打ってくれ』と言う。横のゴロは必要ないと。で、そもそも、そんな表立ったことやるよりも、腹筋とか背筋とか、体力つけることに重きを置いたほうがいいんじゃないか、ちゅう感覚ありますね」

 基礎体力をつける、と同時にもっと走ることが重要なのだ、と米田さんは言っている。