ヤクルトで「蛇直球」を投げた男。ジェームズ・ボンドの曲で勝利を確信した (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

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 サイドスローから投じる最速160キロのストレートは迫力満点だった。長い手足から繰り出されるスライダーやチェンジアップはよく曲がった。打者を圧倒する彼のボールは、韓国時代には「蛇直球」と呼ばれ、「昌勇不敗」と称えられた。

 日本球界でもその実力をいかんなく発揮。筆者もすぐに彼に魅了された。躍動感あふれるピッチングフォームはカッコよかった。彼が在籍していた頃は、できるだけブルペンに近い座席を確保し、試合中の彼の様子を眺めるのが好きだった。

 韓国人の友人、知人は何人もいるが、僕の知る韓国人はいずれも感情表現がハッキリとしており、喜怒哀楽をストレートに表現する人が多かった。しかし、球場やテレビで見る彼は常に淡々としており、いかなるピンチにも動じない。たとえ勝利を手にしても、安堵の表情を浮かべるのはほんの一瞬だけで、いつもクールに喜びを表現しているのも好きだった。彼は、僕の知る「韓国人像」とは明らかに異なっていた。

【一度だけ実現したイム・チャンヨンへのインタビュー】

 来日直後の彼にインタビューしたことがある。球場で見ていたとおり、淡々と受け答えする姿が今でも頭に残っている。初めに「来日前に抱いていた日本球界の印象」を聞くと、彼は「日本で通用すると思っていた」と物静かに語った。

「(イ・)スンヨプ(当時巨人)がいるので、韓国でもジャイアンツ戦はテレビで見ることができました。自分も試合があったので、いつも見ることはできませんでしたが、たまにテレビで見ていて、『あぁ、自分も日本で通用するかもな』と思っていました」

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