カープ伝説のエース・外木場義郎が明かした「完全試合」達成の心境

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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「令和に語る、昭和プロ野球の仕事人」 第5回 外木場義郎・前編 (第1回から読む>>)

 平成の頃から、どこかセピア色に映っていた「昭和」。まして元号が令和になったいま、昭和は遠い過去になろうとしている。しかし、その時代のプロ野球には強烈なキャラの選手たちが大勢いて、ファンを楽しませてくれたことを忘れてはならない。

 過去の貴重なインタビュー素材を発掘し、個性あふれる「昭和プロ野球人」の真髄に迫るシリーズ。5人目はカープのレジェンドエース、外木場義郎(そとこば よしろう)さんが語った、完全試合を含む3度のノーヒットノーラン達成についての言葉を伝えたい。

外木場(中央)の完全試合後の祝杯。右は松田耕平オーナー代理。左の眼光鋭い男は根本監督(写真=共同通信)外木場(中央)の完全試合後の祝杯。右は松田耕平オーナー代理。左の眼光鋭い男は根本監督(写真=共同通信)
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 外木場義郎さんに会いに行ったのは2007年4月。JR広島駅に直結したホテルのラウンジで待ち合わせた。細い黒縁の眼鏡をかけ、髪を七三に分け、紺のダブルのスーツに赤いネクタイを締めた外木場さんは実直な銀行員そのもの。取材の際、ここまでの正装で現れた野球人は過去にいなかったし、ラウンジのソファに腰掛けても身は沈めず、背筋をピンと伸ばしたままだった。
 
 広島が弱小球団だった時代から、外木場さんはエースとしてチームを支えていた。オーバースローからの剛速球、ドロップといわれたタテ割れのカーブを武器に、真っ向勝負するピッチングが身上。1975年には20勝を挙げて最多勝に輝き、球団初のリーグ優勝に大きく貢献。広島の歴史を語る上では絶対に外せない投手だ。

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