2019.09.12

八重樫幸雄は野球少年に伝えたい
「オープンスタンスはマネちゃだめ」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

連載第4回

(第3回はこちら>>)

【「グラウンドは笑う場所ではないから」】

――この連載スタート後、想像以上の反響があって、一部熱狂的なファンが増えているそうですよ、八重樫さん!

八重樫 えっ、そうなの? 

――7月に行なわれた、ヤクルトの歴代スター選手が一堂に会したOB戦・ドリームゲームでも、八重樫さんに対する応援はひと際、大きかったように思います。連載1回目でも書きましたが、やはり、「時代は八重樫さんを求めている」んですよ。ご自分では、この人気をどのようにお考えですか?

八重樫 自分ではわからないよ、そんなの全然、興味ないから(笑)。でも、プロ入りしてから引退するまで、ずっと力を抜くことなく頑張ってきたことが、認められたのかな? 昔、稲葉(篤紀・現侍ジャパン監督)が現役だった頃、攻守交替の時に、いつも全力疾走していたよね。

左足を開いて構えるオープンスタンスが印象的だった八重樫氏 photo by Sankei Visual――はい。ヤクルト時代も、日本ハムに移籍後も、稲葉さんは攻守交替の時にはライトとベンチの間を、常に全力疾走をしていました。

八重樫 彼がヤクルトにいた頃、ある人に、「そんなことで無駄にスタミナをロスするな」と怒られたんだよね。でも、その時コーチだった僕は「お前が全力疾走することで、ファンの人が喜んでいるんだから、堂々と続けろ」って言ったことがある。だって僕も、現役時代にずっと「お客さんの前では常に全力を出す」って考えていたから。もし僕が手を抜くタイプだったら、稲葉に対して「夏は体力を消耗するから、ゆっくり帰ってこい」って言ったかもしれないね。

――でも、実際に体力のロスはないんですか? そして、八重樫さんは高校時代から、その考えをお持ちだったんですか?

八重樫 体力のロスはあるかもしれないけど、そんなものは練習時間や内容で調整すればいいことでしょ。お金を払って見に来てくれるお客さんがいる以上、お客さんの前で手を抜くっていうのは考えられないことだよね。僕が、こういう考えを持つようになったのは仙台商業高校時代のことで、練習試合で対戦した土佐高校が攻守交代で全力疾走しているのを見て、うちの監督が僕らに命じたのがきっかけだった。