PL学園伝説のコーチが明かす「控えの主将だった平石洋介の覚悟」 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 この清水の信念と平石の人間性が交錯し、絆を深めていくようになったのは、平石が主将に任命されてからだ。

 選手間での投票では満場一致で選出されながらも、平石自身は「控えの主将」という立場に後ろめたさがあったというが、この人選には清水も異論は皆無だった。それは、平石の人を見る能力を知っており、次第に彼の芯の強さを理解していったからだ。

 日に日に、清水は平石との絆は強まっていくが、「こいつやったら大丈夫や」と確信した出来事があった。

 ある日、主軸の大西宏明(元オリックス)が練習中に思うようなプレーができず、ふてくされていた姿を見かねた清水が、『走って、頭を冷やしてこい!』と命じた。グラウンド外周をランニングしていた大西は、それでも不満があったらしく、走る速度が徐々に落ちていくのは明白だった。

 そこで清水は、大西ではなく主将の平石を呼びつけ、怒鳴りつけた。

「お前は同級生にもものを言えんのか! チームをうまくまとめられてないやんけ!」

 すると平石は、大西めがけて走り出し「なめとんのか!」と戒めたというのだ。ただの叱責ではない。それは、強烈な"指導"だった。主将の姿勢に触れた清水は、あらためて平石の芯の強さ、覚悟を確信した。

「過去もたまにやっていたことなんですけど、あれは平石を試してもいたんです。どんな立場であっても、同級生に『アカンことはアカン!』と言えるキャプテンじゃないと務まらないですから。あの時の平石はね、あの男前の顔で激高しよったんです。レギュラーだろうが控えだろうが関係なく、『こいつはおとなしそうなヤツやと思っていたけど、ええ芯を持った男やな』って思いましたね」

 清水いわく、教え子のなかでコーチである自分にはっきりと意見を述べてきた主将は、「福留と平石だけ」だという。

「何かを感じたら解決せずにはいられないタイプ」と、清水は平石の人間性を見抜く。試合前から戦術面で意見を交わし、グラウンドではランナーコーチとして清水や監督の意向を整理し、選手たちに指示を与える。とくに3年の春のセンバツ大会を最後に中村順司が監督を勇退してからは、その傾向が強まったと、清水は振り返る。

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