秋山翔吾はイチローのプレーを見て思った。「抗っていたんだな」 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

 過去2年、本塁打が増えたのは、あくまで打撃技術が向上した副産物だ。本人の意図としては、長打より単打の数を増やそうと取り組んでいる。今季はチーム事情で1番から3番に回るが、オープン戦を見るかぎり、秋山の貫く打撃スタイルは変わらないだろう。

 そうして目指すは、2016年以来のシーズン200安打――。昨季5本届かなかった大台に乗せた時、シーズン終了後、果たしてどんな決断を下すのか。

 4月16日に31歳を迎え、海の向こうへ渡るには、一般的には遅い年齢だ。秋山自身も当然わかっている。そうしたあらゆる条件や、自身と家族の希望などを総合的に考えたうえで、どの道に向かえばハッピーなキャリアを描いていけるのか。おそらく、相当考えているはずだ。

 来年以降の身の振り方の判断材料としてではなく、純粋にイチローを見たくて東京ドームに足を運んだMLB開幕シリーズで、多くの発見があったと秋山は振り返る。

「スタンドで見て気づいたことは、ファンがどういうところを見ているかですね。今回は特別なところもありましたけど、イチローさんが打席に行くとか、守備に就くときの歓声への答え方は、やっぱり選手として必要なところかなとも思うし。ファンの人は、テレビにはない臨場感であったり、(選手の)反応だったりをすごく見ているんじゃないかなと思って。そういう意味では、視野を広く見られたところもありました。

 球場に来ている人はいろんなところを見ているんだろうなと思いました。だから、打てなくて下を向いている仕草だけでも、ファンに(そういう気持ちが)伝わっているんじゃないかと思うので、常に前向きにやっておくべきですね。気持ちの切り替えとか、そういう準備をしておくとか」

 たとえ凡打に倒れても、堂々とベンチに帰っていく。殊勲打の後に守備に就いた時には、ファンの声援に大きく手を振って答える。イチローに代表されるように、メジャーリーガーはファンサービスやグラウンドでの振る舞いも一流だ。当たり前のようにコミュニケーションをとり、スタンドのファンを巻き込んで熱狂空間を一緒に作り上げていく。

 観客目線でそうした姿勢を学んだ秋山は、今季、グラウンドでファンの声援に対してどんな反応を見せるのか。そしてシーズン終了後、どういう決断を下すのか。

 楽しみなシーズンが、まもなく幕を開ける。

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