「お前ら負け犬か」石井コーチの檄からヤクルトが王者になっちゃった (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 今シーズン初の4連勝をかけた楽天との2戦目。試合前にこんな光景が見られた。

「DHなんだから、ホームランを打ってくれないと」

 小川淳司監督はグラウンドに姿を見せたバレンティンに、冗談とも本気ともつかない口調で、そう話しかけた。前日の試合でバレンティンが放った打球はいい角度で上がったが、フェンス手前で失速したのだった。

「ミー、ノーパワーね。でも東京ドーム、神宮、広島(マツダスタジアム)だったらホームランよ」(バレンティン)

「とにかくDHでの打率が.192じゃ困るよ」(小川監督)

「昨日の荒木のレフト。ナイスチョイスね(笑)」(バレンティン)

 このバレンティンの切り返しには、小川監督も苦笑するしかなかった。

 実際、荒木はバッティング以外でも、ホームへ好返球し走者を刺すなど、守備でも活躍。2戦目も楽天のエース・則本昂大から先制の2ランを放つなど、素晴らしい活躍でチームの勝利に貢献した。

 そして小川監督から厳しい指摘を受けていたバレンティンが主砲としての活躍を見せたのが3戦目。2-2の同点で迎えた8回表、先頭の坂口智隆が四球で出塁すると、バレンティンの5球目に盗塁に成功。無死二塁の好機をつくった。石井コーチがこの場面を振り返る。

「あのバレンティンの打席は大きかったですし、ありがたかったですね。もちろん、ベンチとしては一発を期待するケースでもありますが、あの場面でバレンティンはバットを短く持ってライト前ヒットでつないでくれた。これまでバットを短く持つことはあったのですが、あそこまで短く持ったのは初めて。本当にコンパクトに右打ちしてくれました。4番がああいうバッティングをしれくれたことが、チームにとって大きかった。ほかの選手たちはあの打席に何を感じたのか。そのことは試合後に話しました」

 このチャンスを生かし勝ち越しに成功すると、最後は4連投となった石山泰稚がゲームを締めた。苦手のビジターで3連勝を飾り、チームの連勝は5と伸びた。

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