これが代走屋の魂だ。鈴木尚広が明かす「ラストプレーの真実」 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Jiji photo

 鈴木はしみじみと、一語一語を噛み締めるように言った。

「チームとして結果を残すこと。チームに求められる存在になって、チームが勝つということに一番のモチベーションを感じていました。あとは自分の役割を果たすために、常に真摯に取り組むだけ。その意味でも、ファンのみなさんの大きな声援は自分のモチベーションを上げてくれました」

 引退した今も週に1度はトレーニング施設で体を動かしているという。その理由を聞くと、鈴木はきっぱりとこう答えた。

「これから、いろんなことを伝えていく人間になりたいと思っているので。それには自分が動けないと説得力がないかな 

 引退後、鈴木は「ポスト鈴木尚広は誰か?」と問われることが多くなった。だが、具体的な人物名を挙げることはしない。決まって「まずは足を武器にしてレギュラーを目指してほしい」と語っている。その鈴木の言葉には、あらためて代走専門プレーヤーの難しさと、「自分の代わりはいない」という強い矜持が潜んでいるように感じられた。

 鈴木尚広の代わりはいない。だが、いつか鈴木尚広の教えを受け継いだ者がダイヤモンドをところ狭しと駆け回る日はきっと来るだろう。

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