なぜそこに? 元セ・リーグ新人王・上園啓史が語る、オランダ野球事情 (3ページ目)
オーストラリアから帰国後、次に上園が向かったのがオランダだった。すでに引退を決め、次の道にある程度の見込みが立った矢先だったが、知人を通じて持ち込まれたその話に、上園は乗った。
「『野球を手段に』って言うと語弊があるかもしれませんけど、普通じゃ野球を使って海外に住めることはないじゃないですか。オランダでは報酬はもらっていましたけど、ホームステイの家賃を引かれると、月12万円程度です。それでずっと生活できるというレベルではないですね。だから、『野球を職業に』という感じでとらえることはできませんでした。家族もいますし。オーストラリアもオランダも現地までの飛行機代は自腹でしたし......。
でも、まったく気になりませんでした。結局、海外で過ごした数カ月は僕にとって勉強期間だったんですよ。勉強するためには授業料を払うでしょ。そう考えると、飛行機代もその費用だって。そうした経験をすると、自分の可能性も広がると思うんです。実際、帰国後はいろんなところから『その経験の話をしてくれないか』と依頼が来ましたし。ホント、たいしたことをしたわけじゃないんですけど......。成功とか失敗とかはなく、とにかく自分にとってはいい経験でしたね」
自身のなかでは"プロ野球選手"という意識はなくなっていたが、アスリートの本能とでも言うべきか、マウンドに立てば常に全力勝負だった。
8チームからなるオランダリーグ1部(フーフトクラッセ)のデグラスコニング・ツインズの先発投手として9試合に登板した上園は、4勝1敗、防御率1.68という圧巻の成績でシーズンを終えた。
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