ジャイアンツ最年長・鈴木尚広が語る「切り札の誇りとチーム愛」 (3ページ目)

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 試行錯誤を繰り返し、ぶれない理論を築き上げた。体の隅々にまで意識を置き、強化すべきところに筋力を蓄えることで、無駄なくスムーズな動きができるようになった。この年齢になった今でも、野球がどんどんうまくなってきていると感じている。

「自分で自分の体を扱えるようになってきたパーセンテージは上がってきていると思います。20代の頃は、持っている力はあったけど、それを使い切れなかった」

 盗塁でいえば、ロスのない抜群のスタートを生み、加速力、その持続力などにつながった。

 若い頃は、ここまで意識は高くなかったと言う。20代の頃は度重なるケガに悩まされた。

「ケガをして、自分自身でマイナスにさせている部分があった。いつクビになってもおかしくなかった」

 ケガをしないためにはどうすればいいか。苦しい経験が考え方を変え、様々なトレーニングを導入するきっかけとなり、今の豊富な知識につながった。

 オフはもちろん肉体強化に努めるが、シーズン中は誰よりも早くグラウンドに現れて入念にストレッチを繰り返し、その後は何種類もの独自に考案した動きで、インナーマッスルや体幹、股関節など、入念に鍛えていく。今では故障と無縁の強い体となった。鈴木は、「(歳を重ねて)ケガをしなくなった、ある種、まれな人間だと思う」と言う。

 阿部慎之助とともに、チームでは生え抜き最年長となった。その培った理論を、今度は後輩に伝えていこうとしている。鈴木を慕う選手は多く、助言を求めにくれば自らの考えを説いていく。

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