工藤監督提案の「競争枠」でホークス先発陣が変わる!? (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

"継投"という一定の方針を持ってチーム作りを進めた結果、常勝軍団を築き上げたのは間違いない。だがその反動からか、近年は若い先発投手が伸び悩むという課題を抱えている。特に2011年オフに和田毅(現・カブス)と杉内俊哉(現・巨人)のWエースが抜けてから、彼らに代わる投手が出てきていないのが現状だ。

 2007年以降に入団したドラフト1位投手を見ても、大場翔太(07年大学・社会人ドラフト)、岩嵜翔(07年高校生ドラフト)、巽真悟(08年)、武田翔太(11年)、東浜巨(12年)、加治屋蓮(13年)らがいるが、誰ひとり年間を通してローテーションを守った投手はいない。

 もちろん、投手出身である工藤監督が就任したからといって、「先発完投型」の投手が育つとは限らない。工藤監督は現役時代から科学的トレーニングを積極的に取り入れ、昨年は筑波大学の大学院でスポーツ医学の研究に励むなど、身体への配慮には人一倍神経を尖らせている。それだけに、無理をさせてでも投げさせるようなことはしないはずだ。

 それでも工藤監督の頭の中には、「投手は先発を目指すもの」という考えがある。そして先発投手のレベルアップ、育成のためのひとつのアイデアがある。それが「先発競争枠」を設けることだ。先発ローテーション6人のうち、固定して回すのは5人まで。残る1枠は投手陣の競争心をあおるために使うという。

「僕が現役の時もそうでしたが、先発6人をすべて埋めてしまうと、入り込む余地がなくなってしまう。そうなるとリリーフ陣のモチベーションを保つのが難しくなるんです。だから、常に1枠を空けておいて、リリーフで好投した投手をそこに入れていく。そして、先発でチャンスを掴めなかった人をリリーフへ。その投手は悔しいでしょう。ならばまた先発に戻れるように頑張ればいい」

 そしてもうひとつ、今季のソフトバンクには日米通算164勝の松坂大輔が新たに加わった。西武時代の松坂は絶対的エースとして、在籍8シーズンで通算72完投を記録した。しかし、メジャーでは「100球の壁」もあり、同じく8シーズンでわずか1回だけ。もともと「投げたがり」で知られる松坂が、工藤監督のもと、かつての輝きを取り戻す可能性は十分にある。はたして工藤監督は、球界屈指の投手陣を完成させることができるのか、その手腕に注目したい。

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