12球団最強。ヤクルト打線を変貌させた「秘密練習」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 この日は、先述したメニューの他にも、杉村コーチが円を描くように歩きながらボールをトスしたり、打者は足を交差させた状態でスイングしたり、間髪入れず20球続けてトスしたり……。まさに七色のティーバッティング。

 熱心にティーバッティングに取り組んでいた山田と畠山に「ティー効果」について話を聞かせてもらった。

「自分は引っ張り専門だったのですが、去年から右方向への打球を意識しはじめ、今年から右方向に強い打球が増えたのはティーバッティングの効果だと思います。僕はバットが下から出てしまうクセがあったのですが、ティーをすることでバットの軌道が確認できる。練習では上から振ることを意識して、試合でレベルスイングになるように調整しています」(山田)

―― ティーバッティングは単純な反復練習ですが、退屈になることはないですか。

「好んで練習しています。逆方向へのヒットが多くなって、打率も残せていますから。ティーバッティングをやることで、安心感を持って打席に立てています。『練習したんだ、大丈夫だ』って」

 畠山は昨年の秋から、杉村コーチとスイング軌道の修正に取り組んできた。かつてヤクルトの4番を任されていた畠山だったが、昨年は不振から二軍落ちも経験。今季にかける思いは強かった。

「早出練習では基本、ティーバッティングしかやっていません。たとえば、キャンプは長い時間をかけてかなりの球数を打ちますよね。でも今の僕は、100球も打っていません。意図を明確にして、こういうボールに対しては、バットの軌道をこうしようとか。打っている球数は少ないですが、ただ漠然と打つよりはタメになっていると思います」

―― 試合中にティーバッティングの効果が出ていると実感することはありますか。

「もちろんあります。反復練習を繰り返すことで、技術的に身についたものもあります。でも、反復練習したことで体が自然に反応したというより、意識の部分の方が大きいですね。練習で意識していることを、試合中もできています。それが結果につながっていると思います」

 そして早出練習を終えた杉村コーチが、全身汗だくになりながら、声をかけてきてくれた。

「僕の仕事はここまで。試合になれば、真中コーチを中心にバッティングプランを立てて、試合に挑みます。真中コーチにも話を聞くといいですよ」

 そう言って、真中コーチを呼んできてくれた。

「僕の仕事は、どちらかといえばメンタル面になりますかね。重要視しているのは、自己犠牲を捨てること。自分の得意な球種、コースにボールが来たら、初球からでも振っていこうと」

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