16年ぶり貯金10。「鯉の季節」にカープファンは何を思う? (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Nikkan sports

 宇和川さんは一緒に観戦する渡部さん(男性/46歳)や深水さん(男性/35歳)たちと酒盛り中でゴキゲンなのだった。

「この時期に、ここまではっきりと首位に立ったことはなかったよね。貯金がたっぷりあるのも珍しい。首位に立った日に順位表を写真に撮ったよ(笑)」

「僕は2ゲーム差がついた時に撮った。でも、なんかヘンな感じなんです。今年はこれから緊張で試合を見るのが怖くなるかも(笑)」(深水さん)

「まあ、普通に考えれば5月に落ちるよな(笑)。開幕前の評論家の高評価にこっちがビックリだもん。ただ、今年は投手がいいから久しぶりにときめいている。もちろん優勝してほしいけど、どこまで続いてくれるのか。第一関門は交流戦だな」(渡部さん)

 エルモレッドさん(男性/31歳)は「正直、落ち着かない順位です」と笑う。

「今年はハラハラする試合が多くて最後まで目が離せない。他のチームは打線が爆発して凄い試合をしていますが、カープはギリギリの試合ばかりですから。でも、先制されても中継ぎ陣が追加点を与えず、打線もチーム打率こそ低いですが、ここぞという場面で決めてくれる。本当に楽しいですね」

 開幕戦では菊池涼介が延長10回表に勝ち越し二塁打。4月2日には堂林翔太が延長12回裏のサヨナラ本塁打。翌3日には梵英心(そよぎ・えいしん)が11回裏にサヨナラ本塁打。

「なんとかCSには行ってほしいですね。謙虚すぎですか? できれば2位になって本拠地でCSを......いや、やっぱりリーグ優勝を味わってみたい(笑)」

 4月22日の試合はエルモレットさんの言う通りの展開となった。広島先発の野村祐輔が2回までに4失点。3回に1点を返し、続く4回表も二死二、三塁のチャンスに堂林。カープファンのボルテージは最高潮に達するも、フルカウントから見逃しの三振。球場は歓声から一転、大きなため息へと変わった。だが、厳しいヤジは聞こえてこない。

「カープファンはやさしいんです。堂林が打てなくても、温かく見守るのがカープファンですから。もちろん優勝を期待していますけど、選手にプレッシャーをかける応援はしたくない」(西沢さん/男性/40歳)

 5回に2点を挙げ、1点ビハインドで迎えた6回表の攻撃。野村謙二郎監督が塁審への抗議によって退場。球場が騒然とし、マウンドには真田裕貴。場面は二死一塁。ここで、菊池が左安打でチャンスを広げ、続く丸佳浩がセンターへ逆転三塁打! さらにエルドレッドが一塁内野安打で追加点。196センチ、122キロのエルドレッドのヘッドスライディングに球場がどよめき、すぐに大歓声へと変わる。神宮球場とは思えない! 監督退場後からのあっという間の逆転劇。

 そして6回までに広島がリードを奪えば、もう勝ったも同然。なぜなら、救援投手で星を落とした試合がひとつもないからだ。中田廉と一岡竜司は、この試合まで無失点を続けており、永川勝浩は防御率1.86。抑えのミコライオも防御率1.08。この日も、中田、一岡、ミコライオの3人が4イニングを無安打、無失点と完璧な継投を見せて試合を締めた。

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