楽天ファン待望の一日「初めて日本シリーズがやって来た!」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 Kスタ正面ゲート前まで立ち話をしていた年季の入った野球ファンと思しきふたりの男性に声を掛けた。

―― 1974年のことは覚えていますか。日本シリーズが開催されませんでしたが?

「そりゃ覚えているよ。でも、オレはそんなにがっかりしなかった。ロッテの試合なんて、1000人も入らないことが多かったんだから。よく試合前にロッテの選手が、このあたりでヒコーキ飛ばして遊んでたなぁ」

 鎌田さん(65歳)は当時を懐かしむように言った。横にいた丸山さん(72歳)も大きく頷(うなず)く。

「当時、東北の人間はほとんどが巨人ファンで、パ・リーグなんて誰も見たことなかったから。後楽園でやってよかったんじゃないの。何しろ、楽天が来るまではいちばん汚い球場だったんだから。雨が降ると、グラウンドにガソリンまいて火で燃やして、乾かしていたからね」

「そうだね、もう時代が違うでしょ。昔は球場に来るのは男ばっかりだったけど、今は女性のファンが多くなったよね。野球もよく知っている。昔なんて、おばちゃんがたまに試合に来ても、ロッテの試合なのに『あれー、長嶋(茂雄)さんがさっぱり出てこんけど』って、そんな時代だったからね」(鎌田さん)

 現在、地元仙台で野球解説と少年野球の指導をしている佐々木信行さん(60歳)は、1974年に捕手としてロッテに在籍していた。「東北で日本シリーズなんて夢のようだね」と感慨深げな表情で語った。

「高校時代にも選手として試合をした球場だからね。ロッテが去った時は、もうプロ野球のチームがここを本拠地にすることはないと思っていたからさ。今は立派な球場になったけど、あの当時はまず寒かったことを思い出すよね。ベンチで火を焚いたり、雨が降ればグラウンドにガソリンまいたりしていたよね」

―― 1974年のことは覚えていますか?

「入団2年目だったかな。選手たちは東京に住んでいたから、仙台の反応は伝わってこなかった。やっぱり東北の方は巨人ファンが多かったし、実際に僕もパ・リーグの試合なんて見たことないままロッテに入団したんだから(笑)。当時、仙台の人はどう思っていたんだろうね」

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