【プロ野球】藤浪晋太郎の開幕ローテーション入りは正解なのか? (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Koike Yoshihiro

「甲子園連覇という偉業をやってのけた投手。やはり次元が違いますよ。150キロを超すストレートに加え、変化球も素晴らしい。それに要所で三振も狙える。現時点で、この他に何が必要なんですか。開幕ローテーションだって、キャンプから争った中で勝ち取ったものだし、力があるから一軍で投げる。それだけのことです。『2、3年ファームで鍛えてから』とか『将来があるのでじっくり』というのは、要するに今の時点で力がない場合のこと。急いで一軍で投げさせて故障したらという意見も耳にするけど、それも含めて実力なんです」

 それぞれの立場によって意見は分かれるが、どちらも藤浪の実力を認め、大きく育ってほしいということでは同じ。ただひとつ言えることは、藤浪自身に不安や焦りはまったく感じられないことだ。

 もちろん、課題がないわけではない。走者を置くと球速が落ちると言われるセットポジションでの投球、試行錯誤を繰り返す調整法、スタミナ......。ただ、こうした課題は藤浪自身がプロ入り前から自覚してきたこと。だからこそ「開幕一軍にこだわらない」と言ってきたわけで、ひとつひとつ明らかになる問題に対しても、慌てる様子はなく、自分を見失うこともない。

 オープン戦最後の登板となった3月24日のオリックス戦に先発し、6回途中6失点でマウンドを降りた。試合後、待ち受ける報道陣の前に姿を現すと、少し疲れた表情を見せ、こう切り出した。

「課題も見つかりましたけど、それより多くの収穫がありました。今日の結果を次の試合にいかしていけたらいい、そう思っています」

 目の前に立ちはだかる壁は自らを成長させる糧だと、高校時代から学んできた。そう考えると、このノックアウトによってデビュー戦がより一層楽しみになってきた。開幕ローテーションスタートがこの先、藤浪のキャリアにどのような影響をもたらすのか。その前に、まずは注目のデビュー戦をじっくり堪能したい。

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