イチロー獲得で、マリナーズは「こんなに良いことずくめ」を検証する (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 もちろん、イチロー選手の獲得には「真摯に打ち込む姿が若手の見本になる」という側面もあります。マリナーズの打線を見ると、中軸を打つカノ、ネルソン・クルーズ、カイル・シーガーの3人以外は20代ばかり。現在44歳ながらストイックにプレーするイチロー選手の行動は、若手にとって最高のお手本となるでしょう。

 そしてもうひとつ、イチロー選手の加入でマリナーズが大きく期待していることがあります。それは、イチロー選手の絶大なる人気面です。

 マリナーズは2001年、イチロー選手が入団した1年目にメジャータイ記録の116勝をマークし、圧倒的な強さで地区優勝を果たしました。ただ、その年はリーグチャンピオンシップシリーズまで進出しましたが、翌年から計16年間もプレーオフから遠ざかっているのです。これほど長くプレーオフに出場していないチームは、メジャー30球団どころかアメリカ4大プロスポーツ全体を見てもありません。

 特に2004年以降、14年間で勝率5割以上を記録したのは4回だけ。昨年は「もしかして地区優勝?」という声もありながら、最後はヒューストン・アストロズから23ゲーム差をつけられて西地区3位タイ(78勝84敗)に終わりました。

 本拠地球場がキングドーム時代の1997年、マリナーズは球団史上初となる年間観客動員数300万人を突破。そして1999年7月にセーフコ・フィールドが開場し、2002年には史上最多の354万人もの観客動員数を記録しました。

 しかし、チームの低迷とともに人気も徐々に下がり、2011年には年間100万人台にまで落ち込んでしまったのです。2014年以降はかろうじて200万台に持ち直したものの、ここ10年連続でメジャー平均以下の観客動員数となっています。2012年7月にイチロー選手がニューヨーク・ヤンキースに移籍したあとは、日本人の観客も減りました。マリナーズが人気回復を求めてイチロー選手を獲得した面は否めないでしょう。

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