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快進撃を続ける田中将大。「ルーキー20勝」の可能性 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 ちなみに、29年前の1985年にトム・ブラウニングが20勝した年も、リーグには4人もの20勝投手がいました。上記で挙げたルーキー20勝投手11人の中で、最多勝のタイトルを獲ったのは、1912年に26勝を挙げたラリー・チェニーだけです。今の時代なら、20勝すればほぼ間違いなく最多勝のタイトルを獲れるでしょう。もし今シーズン、田中投手がメジャー1年目で20勝投手になれば、全米ですごい騒ぎになると思います。

 過去を振り返ると、20勝ペースで勝ち続けて大フィーバーとなった出来事が2度ほどありました。まずひとつは、1976年にタイガースのマーク・フィドリッチが見せた快進撃です。その年の5月にメジャー初勝利を挙げると、その後は8戦8勝と連勝街道を突き進み、オールスターではア・リーグの先発投手にも抜擢されました。さらに後半戦も勢いは止まらず、終わってみれば29試合の先発で完投24回、19勝9敗をマークして、防御率2.34はリーグトップの成績を残したのです。もちろん、ア・リーグ新人王に輝き、サイ・ヤング賞の投票では2位に食い込みました。その後、ケガに悩まされてプロ生活5年という短命に終わりましたが、1976年のフィドリッチは間違いなく全米のアイドルでした。

 そしてもうひとつの大フィーバーは、1981年、ロサンゼルス・ドジャースのフェルナンド・バレンズエラの登場でしょう。フィドリッチと同じように開幕から8連勝をマークしたのですが、その内容も衝撃的でした。8勝のうち完投勝利7回、防御率は脅威の0.50。1954年のボブ・グリム以来、誰も達成できなかった「20勝ルーキー誕生か?」と、アメリカ中が熱狂しました。しかし残念ながら、夏場の2ヶ月間に渡るストライキによってシーズンが中断され、最終的には13勝7敗に終わったのです。もし、ストライキがなかったら、バレンズエラが27年ぶりの快挙を達成していたかもしれません。

 現在、14試合の登板で11勝――。田中投手がこのペースで勝ち星を積み重ねていけば、間違いなく大フィーバーが巻き起こるでしょう。いまや田中投手はヤンキースの救世主として、全国的な人気になりつつあります。1985年のブラウニング以来、29年ぶりとなる快挙を達成できるのか、気の早い話ですが胸が高鳴ります。

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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