メジャーリーグ2013。ひっそりと引退していった男たち (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 なによりゲレーロを有名にさせたのは、メジャー屈指の「悪球打ち」なところでしょう。どんなボール球にも手を出し、それを次々とホームランにしていきました。1940年代後半から1960年代前半に活躍したヤンキースのヨギ・ベラも悪球打ちで有名でしたが、ゲレーロも劣らぬメジャー史上屈指の「バッドボールヒッター」と言えるでしょう。手袋をはめずに素手でバットを豪快に振り回す、非常に野性味あふれる魅力的なバッターだったと思います。

 また、ゲレーロはパワーだけでなく、スピードもあり、さらにライトからの強肩も魅力の選手でした。2002年には39本塁打・40盗塁と、あとホームラン1本で「40・40(フォーティ・フォーティ)」となる活躍を見せてくれました。バッティング、パワー、スピード、守備力、送球能力の5項目で高いレベルを備えている「5ツールプレイヤー」という言葉が生まれたときの、まさに『元祖』とも言える選手ではないでしょうか。

 ゲレーロは今年の9月14日に引退を表明しましたが、最後にメジャーでプレイしていたのは2年前。ボルチモア・オリオールズが最後の球団でした。その後、オファーを待っていたのですが、残念な結果になってしまいました。本人いわく、唯一の心残りは「通算500本塁打に届かなかったこと」だそうです。2011年も145試合に出場して打率。290・13本塁打・63打点と、十分な活躍を見せていたので、もしこの2年間、メジャーでプレイしていれば500号を達成できたかもしれません。

 ゲレーロもヘルトンと同様、いずれ殿堂入りするでしょう。通算本塁打数ではサミー・ソーサ(609本塁打/1989年〜2007年)に劣るものの、安打数はフリオ・フランコ(2586安打/1982年〜2007年)を抜いてドミニカ選手歴代1位。ゲレーロこそ、ドミニカ野球史上最高のプレイヤーだと思います。

 そしてもうひとりバッターを挙げるなら、今年6月20日、自身の誕生日に引退を発表したカルロス・リー(37歳)です。1999年にシカゴ・ホワイトソックスからデビューし、メジャー14年間で通算358本塁打をマークしたスラッガーでした。この通算本塁打数は、パナマ出身のメジャーリーガーとしては歴代1位。ちなみに歴代2位は、1971年にレッドソックスでメジャーデビューを果たし、1987年からの2年間は近鉄バファローズでプレイしていたベン・オグリビーの235本塁打です。

 日本ではあまり知られた存在ではありませんでしたが、リーはパワーヒッターでありながら、実にスマートなバッティングをする選手でした。メジャーでは1シーズンに200三振を記録する選手もいるくらいですが、リーは年間100個以上の三振を一度も記録したことがないのです。これは現代のホームランバッターの中では、極めて珍しいタイプだと思います。晩年はバッティングが奮わず、2012年を最後にグラウンドから離れていましたが、2000年代のメジャーリーグを彩ったリーも忘れてはいけないバッターのひとりでしょう。

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