最下位から世界一へ。上原浩治はチームに何をもたらしたのか (3ページ目)

  • カルロス山崎●文 text by Carlos Yamazaki
  • photo by Getty Images

 上原の前向きで、明るい性格はドミニカ共和国出身の主砲、デビッド・オルティスや、普段は寡黙なクレイ・バックホルツ投手、ジャコビー・エルズベリー外野手、チームリーダーのひとりジャスティン・ペドロイア二塁手といった生え抜き選手との距離をグッと縮めることになった。

 公式戦では自己最多の73試合に登板した。レッドソックスがヤンキース、レイズなどの強豪がひしめくアメリカンリーグ東地区に属していることを考えると、防御率1.09、WHIP(※)0.57といった成績は非現実的にも思える。しかも、打者に有利とされる本拠地フェンウェイパークで、他球場よりも打たれなかったことや、フライボールピッチャーでありながら、最後の3カ月は被本塁打ゼロだったことなどは、上原が相手よりも自分自身を研究し、辛抱に辛抱を重ね、毎日毎日コツコツと地道なルーティンを繰り返してきた何よりの証拠ではないだろうか。

(※)WHIPとは、被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数値で、1イニングあたり何人の走者を出したかを表わす。WHIP1.00未満なら球界を代表する投手と言われている。

 ボストンでは日付が変わって、ハロウィンを迎えた。ワールドシリーズの第7戦が行なわれないことは、地元の子どもたちにとっては朗報だ。そして3カ月半後には、キャンプインする。上原は優勝パレードを終えてから、ようやく短いオフを迎える。

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