好調アスレチックス。中島裕之に出番は巡ってくるか? (2ページ目)

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • photo by Getty Images

 例えば、バートロ・コロン。エンゼルス時代の2005年に21勝を挙げ、サイ・ヤング賞に輝いて以来、レッドソックス、ホワイトソックス、ヤンキースとわたり歩くも負け越しの日々。薬物使用疑惑もついて回り、40歳という年齢やアスリートとは思えない体型、2010年を肩の手術で棒に振ったことを考えれば、誰もが獲得に二の足を踏むが、アスレチックスは躊躇しなかった。実際、昨季は10勝9敗と勝ち越し、今季は前半終了を待たずに10勝を挙げる勝ち頭だ。

 例えば、ブランドン・モス。レッドソックスで期待された2008年、マニー・ラミレスとジェイソン・ベイを含む三角トレードでパイレーツへ。移籍先ではギャレット・ジョーンズらの出現でベンチへ追いやられ、2010年には成績不振でマイナー降格。翌年はフィリーズ傘下3Aで1年を過ごし、その存在すら記憶の片隅に追いやられていた。が、ここでもやはり、アスレチックスはマイナー契約という形ではあるが、モスに再生のチャンスを与えた。モスは現在、一塁手のレギュラーとして75試合に出場し、チーム2位の14本塁打を放っている。

 そしてもうひとつ、ビーンGMが得意とする分野がある。危機管理のフィールドだ。

 昨年12月、ポスティング制度で中島裕之と2年契約を結んだ。入団会見で、ビーンGMは「2009年のWBCから注目していた。正遊撃手としての活躍を期待している」と話していた。だが、今年2月のキャンプイン直前になり、アストロズから遊撃手ジェド・ラウリーをトレードで獲得。誰もが「中島と契約したのになぜ?」と首をひねったものだ。

 だが、ビーンGMのビジョンは明確だった。

「何が起こるか分からない。選手層を厚くすることにデメリットはない。組織を統轄する者として、当然の危機管理対策をしているにすぎない」

 この危機管理対策プランは、単に選手の数を増やすだけに留まらない。複数ポジションを守れる選手を増やすことも含まれている。1人が複数ポジションをカバーできれば、実質2人、3人分の働きを計算できる。今季新加入したラウリー(遊撃、二塁、三塁)とクリス・ヤング(全外野)が好例だ。英語では 「versatility(多様性)」というが、汎用性のある選手が多いことも、アスレチックスが持つ強みのひとつだろう。

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