【MLB】2012年を振り返る・前編。ベーブ・ルースの「怪記録」に肉薄? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 今年のダンは、メジャー最多となる105個のフォアボールを選び、三振もMLB史上ワースト2位の222個でトップとなりました。しかしホームランが41本と、44本塁打のミゲル・カブレラにあと一歩届かず。残念ながら偉業達成は叶いませんでした。

 また、ダンの打率は極端に低かったので、アメリカでは「史上最低打率の本塁打王、誕生か?」とも騒がれていました。過去、本塁打王で最も打率の低かったのは、1982年に37本でタイトルを獲ったデーブ・キングマン(当時ニューヨーク・メッツ)の打率.204です。ダンの今年の打率は、キングマンと同じ打率.204。史上最低打率の本塁打王にもなれませんでしたが、ダンは球史に残るスラッガーぶりを発揮してくれたと思います。

8位 アーロン・ヒル、サイクルヒットをシーズン2度達成

 アリゾナ・ダイヤモンドバックスのアーロン・ヒルが残した偉業も、決して忘れてはいけません。6月18日、シアトル・マリナーズ戦でサイクルヒットを記録すると、わずか11日後の6月29日、今度はミルウォーキー・ブルワーズ戦で、またもサイクルヒットを成し遂げたのです。アメリカでは、サイクルふたつを合わせて『バイシクル』と呼ばれました。

 シーズン2度のサイクルヒットは、1931年のベーブ・ハーマン(当時ブルックリン・ロビンス)以来、メジャー史上81年ぶりの快挙です。しかも、19世紀の1リーグ時代を含めても、これまで4人しか達成したことがありません。また、同じ月に2度達成したのは、1883年9月のジョン・ライリー(当時シンシナティ・レッズ)という選手以来。なんと129年ぶりの出来事なのです。

 わずか12日間で2度のサイクルヒットは、『2試合連続ノーヒットノーラン』に匹敵するぐらいの偉業だと思います。アメリカではピッチャーのノーヒットノーランと、バッターのサイクルヒットは、良く比較されます。なぜかというと、100年以上の長い歴史において、ノーヒットノーランとサイクルヒットの数は、同じぐらいの数だからです。よって2週間足らずで『バイシクル』を成し遂げたヒルの偉業は、2試合連続ノーヒットノーランを演じるぐらいの、まさに『奇跡』と言えるでしょう。

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