【MLB】ダルビッシュ有は「3つの課題」をクリアできるか? (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by AFLO

 ふたつ目の課題は固い粘土質のマウンドだ。日本の柔らかいマウンドでは着地した足を滑らせて投げることが可能だったが、その投げ方をメジャーのマウンドでやるとボールを思うように操れなくなる。その点ダルビッシュは股関節を上手に使い、ソフトランディングで投げるため不安要素はないと思われるが、日本にいた時と同じ歩幅で投げられるか否かがポイントになってくるだろう。

 野茂は1年目、日本時代と同様のステップ幅で投げて快刀乱麻のピッチングを披露したが、じつは8月の中旬あたりから、左足のすね近辺がパンパンに張り、シーズン後半に苦しんだ。松坂大輔も同様に日本時代と同じ歩幅でスタートしたが、3月26日のレッズとのオープン戦で左足のふくらはぎ下部の筋肉が張り、左足が思うように動かなくなった。ふたりは時期こそ違ったが、着地する左足が固い粘土質の影響で悲鳴を上げ、その後は、歩幅を一足ほど短くし、左足に負担のかからない投げ方に変えた。野茂が2年目のシーズン、松坂は1年目の4月からだ。そして、ふたりのコメントも共通していた。

「日本時代と同じ歩幅で投げたいですけれど、それだと体が持たないんですよ」

 そして3つ目は短い登板間隔だ。ダルビッシュは中4日で30試合、200イニングを投げ切ることができるのか。

「去年の後半も中5日でしたし、120球投げての中5日、ハードなトレーニングを続けての中5日だったので、まったく問題ないと思います」

 ハードなトレーニングに取り組み、体も強くなっているからこそ、技術も右肩上がりに推移している。しかし、ひとつだけ心配なことがある。それは日本の打者とメジャーの打者のレベルの違いだ。ダルビッシュの力なら、日本では真剣に投げなければならない打者は9人のうち多くても4、5人だろう。しかしメジャーでは、特にア・リーグはそうはいかない。力を抜いて投げられる打者はせいぜいひとりかふたり。同じ120球でも疲労度はまったく違ってくる。ここに一抹の不安を感じてしまうのだ。

「ピッチングに関しては、打者に対して投げてみないとわからないです。成績に関しては、自分のベストを尽くし、ケガなく1年間投げること。プレッシャーに関しては、頭が悪いのか、感じたことはありません」

 今回、レンジャーズの総投資額は、1億1170万3411ドル(約86億円)。年俸は6年総額6000万ドル(約46億2000万円)で1年平均では1000万ドル(約7億7000万円)。まだメジャーで登板していないことを考えれば、破格の扱いだ。期待の大きさとともに、結果も求められることになる。これまで日本人投手が苦しんだ"3つの課題"をクリアし、順調に勝ち星を重ねることができるのか。とりあえず今は、ダルビッシュのスプリングトレーニングを楽しみに待ちたい。 

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