興南・我喜屋優監督はなぜ授業の重要性を訴えるのか 「高校野球は3年で終わるけど、人生のスコアボードには終わりがない」 (2ページ目)
── それでも指摘するのはなぜですか?
我喜屋 僕は、沖縄の子はみんなかわいいから。沖縄の子どもたちがディスポートして(楽しんで)、海を越えて頑張ってほしい。やっぱり野球バカは育てられない。先に僕は社会の道を行っているから、「この道ってのはこうだよ」「ここに行ったら危ないぞ」「もっとこっち側を歩け」と、ある程度、右と左を教えなきゃいけないよね。
【条件闘争でウチが負けるのは当たり前】
── 沖縄の高校野球では「打倒・興南&沖縄尚学」と目標にされています。興南はどういう存在としてあり続けたいですか。
我喜屋 ウチが自慢できるのは、本当に授業をちゃんとやってから、野球をやっているということ。高野連のいろんな規定を遵守して、寮費は全部もらう。みんな寮で食事をするんだから、それは平等で当たり前。でも条件という面で、違うところに行く子も多いと思う。もちろん、「学力的に興南に行けない」と最初からあきらめる子もいるけど、そこはもっとチャレンジしてほしい。
もっと自慢するところは、「ウチの子は試合に出られなくてもいいので、3年間お願いします。心を鍛えてください」という親がけっこう多いんです。だから常に部員は(1学年)30人体制で来ている。一番多かったときは(3学年で)150人いたときもあったけど、それでは多すぎて野球どころじゃなかったです。
── 条件をつけなくても、興南で野球をしたいという子はいる、と。
我喜屋 もし興南をはじめ、多くの学校が寮費をタダにするとか、入学条件の競争をするようになったら、高校野球は破滅するよ。いっときの条件より、ウチは将来を約束する。入部希望者が条件闘争をしてきたら、僕は「ほかに行ってください」って言います。条件闘争でウチが負けるのは当たり前。負けるというか、(学生野球憲章を)守っているから。ちゃんと競争のなかから、平等ななかから人生を歩んでほしい。高校3年間は準備期間だからね。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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