【夏の甲子園】7年前に感じた大阪桐蔭の「声」の強さ 敗れた興南の元ソフトバンク・島袋洋奨投手コーチが語った強力打線対策とは?
【大阪桐蔭の"目に見えない強さ"】
大会2日目、春夏連覇を果たしたことがある強豪同士の一戦に敗れた興南(沖縄)の我喜屋優(がきや・まさる)監督は、試合後にこう語っている。
「バッターは体格もいいし、振りもいい。何より大事なところで畳みかけられるところに、場慣れ、経験を感じた。先発した田崎颯士は非常にいい形でスタートしましたが、ヒット、四球、長打を許し、彼にとっては悪い展開となってしまいました」
1回戦に勝利した大阪桐蔭 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る
大阪桐蔭(大阪)の背番号11、先発マウンドに上がった中野大虎は4安打完封の好投を見せた。
「打線が9回までに追いついてくれると思ったが、相手投手が粘り強く、変化球の的が絞れなかった。前半で1、2点取れていたら、いい展開にできたと思うので悔いが残ります」
3回に3点を奪われ、4回に2点を追加された。日本一の経験がある我喜屋監督も何もできずに、0対5で敗れた。
「大阪桐蔭は強い!」というのは、高校野球ファンの共通認識だろう。中学時代に実績のある選手が全国から集まり、切磋琢磨している。強いのは当たり前と誰もが思う。
大阪桐蔭の"目に見えない強さ"に筆者が驚かされたのは、2018年に根尾昂(現・中日ドラゴンズ)、藤原恭大(現・千葉ロッテマリーンズ)などを擁して2度目の春夏連覇を達成する前年、2017年に開催された「えひめ国体」でのことだった。
坊っちゃんスタジアムで大勢の観客が見守るなかで行なわれた試合は、甲子園大会のようにブラスバンド部の応援があるわけではないため、選手の声がスタンドまで聞こえてきた。出場した12校のなかで、最も声が大きかったのが、大阪桐蔭だった。
野球の声にはいろいろな種類がある。キャプテンの号令に合わせた返事(シートノック開始や試合前後のあいさつ)のほか、ピッチャーに対する激励、ピンチの場面での注意喚起、相手にプレッシャーをかける声などだ。昭和の高校野球では、相手チームを挑発するためのヤジもあったが、フェアプレーが定着した今では消滅している。
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著者プロフィール
元永知宏 (もとなが・ともひろ)
1968年、愛媛県生まれ。 立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。 大学卒業後、ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。著書に『荒木大輔のいた1980年の甲子園』(集英社)、『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)、『近鉄魂とはなんだったのか? 最後の選手会長・礒部公一と探る』(集英社)など多数。2018年から愛媛新聞社が発行する愛媛のスポーツマガジン『E-dge』(エッジ)の創刊編集長