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ロッテ東妻勇輔が智弁和歌山の弟・
純平へエール。全国制覇の夢を託す

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 兄はいつも弟の視線を背中に感じてきた。

「ずっとアイツのなかでは、僕が憧れの選手だったみたいです。僕が中学生の時、ボーイズリーグの試合で、甲子園球場で1日2本塁打を打ったことがあって、それを小学生だったアイツが見ていた。それが強いインパクトとして残っているみたいです。今でも『まだまだお兄ちゃんには敵わない』とか言ってきたりしますし、結構かわいいところがあるんですよね」

 現在、ロッテに在籍する東妻勇輔は、智弁和歌山でプレーする弟・純平の話題になると、途端に相好を崩した。マウンドで「オリャ―」と雄叫びを上げて投げる威勢のいい姿とも、取材時に記者たちに見せる人懐っこい表情とも違う柔和なまなざしに、弟への強い愛を感じた。

攻守でチームを引っ張る智弁和歌山の東妻純平攻守でチームを引っ張る智弁和歌山の東妻純平 ふたりは歳が5つ離れている。勇輔が野球を始めたのは小学2年の時。その後、勇輔の2歳下の妹も同じチームに入団したこともあり、東妻家の週末は野球場で過ごすことが多かった。

 そんな環境のもと、純平も自然ななりゆきで小学1年の時に野球を始める。中学では勇輔と同じ和歌山の紀州ボーイズに進み、遊撃手としてチームの中心選手となった。そんな弟の活躍は、当時、日体大でプレーしていた勇輔の耳にも届いていた。

 冬のある日、正月休みで和歌山の実家に帰省した勇輔は、紀州ボーイズのOB会の催しで、当時中学3年だった純平と対戦することになった。勇輔が振り返る。

「打たれましたよ(笑)。球種は、たしか真っすぐでしたね。自分が大学に入って、ちょうどリーグ戦でも投げ始め、自信もついてきた頃。冬のボールを投げていない時期とはいえ、いま広島にいる林晃汰と純平のふたりに打たれた。

 純平には右中間に持っていかれた。基本的に純平は逆方向(ライト方向)の打球がよく伸びるので、完璧に打たれました。(対戦前から)実力はあると認めていたんですけど、『これほどとは......』と正直、思いましたね」

 兄の前で弟が初めて非凡な才能を見せた瞬間だった。

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