スカウトが言う「甲子園のホームラン量産は危険なシグナル」の真意 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 昔と今の高校球を比較して、大きく変わったのは体格だ。今は公立校でも身長マイナス100の体重をノルマとすることが当たり前。寮のある学校はもちろん、自宅から通う選手でも、大きな弁当箱に白米を詰め、1食3合のごはんを食べる"食事トレーニング"が流行している。

 これに加えてプロテインなども飲み、ウエイトトレーニングや加圧トレーニングなどで体を大きくする。体をつくるための知識や技術が上がったことで、身長は低くてもがっしりした体格の選手は多くなった。体をつくってスイング量をこなせば、当然、振る力はつく。かたちはどうあれ、スタンドインできるパワーは養われるのだ。

「大人の体格にして金属バットを持てば、ホームランは出る。まさに"鬼に金棒"状態だよ」(セ・リーグ球団スカウト)

 もちろん、体格がよくなれば投手の投げる球も変わる。かつては140キロを超える速球を投げればプロ注目といわれたが、今や140キロは甲子園のスタンダード。145キロを超えなければプロ注目とは言われない。スピードが増せば、当然、反発力も大きくなる。投手の球速アップが本塁打増加につながっている可能性は高い。

 球速アップの影響はもうひとつある。140キロが出るようになったことで速球に自信を持ち、「困ったときはストレート」という投手が増えていることだ。このため、3-1、2-0、2-1などのボール先行カウントやフルカウントなど、苦しいときにストレートを投げるケースが多くなる。

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