「ゲームセットのはずが...」。明徳義塾・馬淵監督が悔やむ2つの誤算 (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 3対2で迎えた8回裏には、明徳の4番・谷合悠斗にソロホームランが飛び出し、早実を突き放した。

「この展開なら、ムード的に(流れが)こちらに傾くんですよ。ところが、(7番から始まった早実の)最終回の攻撃では、『なんとか清宮に回そう』と早実は思うし、ウチは『清宮には回したくない』『清宮までに終わらせたい』という心理が働く。そういうのがプレッシャーになったのかもわからんね。普通ならあのホームランで終わりですよ」

 冒頭の場面では、馬淵監督の脳裏に継投策もかすめた。

「ただ、相手は左打者ですし、7回ぐらいからブルペンで投げていた市川悠太のボールがばらついていたんですよね。交代したら、フォアボールを出すんじゃないかと思って......」

 9回、そして延長10回は、甲子園が不思議なムードに包まれていた。

「9回表に満塁になったとき、ウチのピッチャーがボール球を投げる度に、ベンチの後ろが喜びよるんですわ(笑)。仕方ないですよね。野球界にはスター選手がいた方がいい。(昨秋の東京大会の決勝で)早実が日大三に勝ったときも、劇的な試合(9回裏に2点差を追いつき、野村大樹のサヨナラ2ランで勝負が決まった)だったし、何か"持っている"チームであるのは確か。これが伝統なんかなあ」

 松井秀喜に対する5打席連続敬遠を引き合いに出すまでもなく、高校野球界きっての策士は、取材の終わりにこんな捨て台詞を吐いた。

「ついとるわ、早実には。野球の神様が」

 勝算も勝機もあった。だからこそ、悔やまれる敗戦だった。

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