【新車のツボ144】ホンダ・シビック・タイプR、鬼のような世界最速FF (3ページ目)

  • 佐野弘宗●取材・文・写真 text&photo by Sano Hiromune

 シビック・タイプRは私を含むアマチュアドライバーにとって、山坂道でちょっとアクセルを踏んだだけでも「MTじゃ手足が追いつかない!」と泣きが入るほど速いのだが、じつは乗り心地も望外に快適である。


 サスペンションには、路面変化に合わせてリアルタイムで硬さを変える電子制御可変ダンパーが標準装備で、柔らかめの"コンフォート"からバランスのいい中間の"スポーツ"、そしてサーキット走行やタイムアタック用のハードな"+R"という3種の制御パターンモードがある。もちろん、どれを選んでも絶対的にはスポーツカーらしい引き締まった乗り心地なのだが、最硬の+Rモードにして市街地を走っても、絶望的に硬いわけではない。

   この種のハードコアスポーツカーでは、ほんの数年前まで、電子制御サスペンションなど邪道もいいところだった。どんな路面の凹凸をも踏みしだくようにガッチガチに硬いのが常識で、そんな乗り心地の苦行に耐えてこそ本物のスポーツカー乗り......みたいな風潮すらあった。

 しかし、新型シビック・タイプRを開発したエンジニアによれば「ある程度は柔らかくしなやかなサスペンションで姿勢を安定させて、空力を最大限に引き出す」のが、ニュルのような刻々と変化する路面で本当に速く走らせるためのツボなのだという。

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