【新車のツボ99】
スズキ・アルト・ターボRS試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ダイハツ・コペンに続いて、ホンダS660が間もなく発売される。ともに軽自動車(以下、軽)ながら、本格的な2人乗りスポーツカーである......とくれば、気になるのがスズキの動向だが、カリスマ経営者である鈴木修氏(スズキ会長兼社長)は「ウチは2人乗りはやらない」と明言した。スポーツカーはそもそも大量に売れるものではなく、日本自動車業界屈指の"商売人"と評されるスズキだけに、これはこれで冷静な経営判断だろう。

 そうはいっても、競合他社の盛り上がりを、商魂たくましいスズキがただ見ているはずもない。スズキはスズキで、別のカタチの軽スポーツを繰り出してきたのだ。

 アルト・ターボRSは実用軽(=新型アルト)をベースにした本格ホットハッチである。私を含むオッサン世代なら、コペンやS660で1990年代初頭の軽スポーツカーブームを思い出すと同時に、ターボRSにもかつて一世を風靡した軽ホットハッチの"アルトワークス"の影を重ねるはず。「中高年の思い出のツボ」という意味では、コペンやS660も、ターボRSも基本的に似たようなものである。

 ターボRSの成り立ちは正攻法そのもの。アルトのボディにパワフルなターボエンジンを積んで、内外装をストライプやらメッキ、"赤い差し色"やらで飾ったお約束の仕立てである。ただ、スポーツモデルなのに(どうせ台数が見込めない)3ペダル・マニュアルを用意しない......という判断は、良くも悪くもスズキの商売上手っぷりをうかがわせるものの、オートマでもヌルいCVTでなく、あえてマニュアルベースの自動MTを選んだところが"開発陣のささやかな抵抗!?"だろう。

 さらに、サスペンションのスプリングやダンパーが専用なのは当然としても、サスペンションの軸となるブッシュやタイヤまで専用開発、さらには"スポット溶接の増し打ち"というシブいボディ強化策......と、その内容は、じつはけっこうマニアック。この"上層部の目を盗んで、ノリノリでやっちゃった感"は、素直にツボである。

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