【新車のツボ74】VWザ・ビートル・ターボ試乗レポート
このクルマはその名のとおり、フォルクスワーゲン(VW)のザ・ビートル(以下ビートル)に、強力ターボエンジンを積んだスポーツモデルである。同じようなサイズで、前輪駆動という基本レイアウトや前後サスペンション形式も基本的に同じ......というわけで、ビートル・ターボは前回紹介したゴルフGTIとサイズも性能も酷似している。
ただ、よく似てはいるけど、同じではない。
まず、ベースとなったビートルとゴルフの登場時期には1年ほどの差がある。お察しのとおり、ビートルのほうがちょっと古いだけだが、今のゴルフはクルマの芯から新しくなったので、基本土台設計からして世代がひとつちがう......といってもいい。また、エンジンも両方が1984ccの4気筒ターボだが、新しいゴルフGTIのエンジンは細かいところまで徹底改良されている。ゴルフGTIのほうが性能が高いのに燃費もいいのは、エンジンが新世代となったのが大きな理由のひとつだ。
また、ビートルとゴルフでは専門用語でいうホイールベースとトレッド......すなわち4本のタイヤの"ふんばり寸法"もちがう。ビートル・ターボのほうがゴルフGTIよりも、4本のアシのスタンスが前後に100mm短く、そして左右には25~35mm広い。
「せいぜい10cmだろ!?」という向きもあるかもしれない。だが、ホイールベースやトレッドというのは1cm変わっただけでも、実際の乗り味にはけっこう響く。しかも、ビートルとゴルフでは「前後に短いうえに左右にも広い」と、ダブルでちがうのだ。
だから、このビートル・ターボとゴルフGTIは、販売時期もほとんど変わらず、基本的な味わいはどちらも間違いなくVWのスポーツモデルなのだが、乗ってみると別物だ。
ご想像のとおり、ビートル・ターボのほうがよくいえば古典的、悪くいえば古い。乗り心地はガチッと素直に硬く、路面が荒れていれば正直に上下に揺すられる。ビートル・ターボはステアリングを切った瞬間にカッキーンと曲がりはじめるかわりに、ピタッとした方向安定性ではゴルフGTIにゆずる。エンジンもビートルのほうが豪快で迫力に優るが、実際の走行ペースはゴルフGTIのほうが明らかに速く、しかも運転はラクチンなのである。
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