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【新車のツボ47】
VWゴルフ 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ゴルフを運転していると、4本のタイヤが今どこを通って、どう路面に食いついているかがビンビンに伝わってくる。手足の微妙な力加減だけでピタリと思いどおりに動くから、ステアリングを途中で切り増したり切り戻したり、あるいは走行中の速度調整するためにブレーキを踏む頻度が圧倒的に少ない。サスペンションもストロークもたっぷりしていて、しかも滑らか。だから、路面が荒れていたり、ちょっとくらい運転を失敗しても、クルマはゆったりと快適に安定姿勢をたもつ。

 まあ、エンジンは回転途中からターボがドバッと効いたり、変速がやけにカキカキとせわしなかったり......と、パワートレーンには燃費と効率を優先しすぎの感がなくはない。ただ、ほかの部分が圧倒的に優等生のゴルフだからこそ、こういう些細な弱点がマニアのツボをそそって逆に愛着もわく。

 今回乗ったゴルフはことさらスポーティなグレードではなかったが、突き抜けた当たり前は"運転の本質"を味わえる。だから、乗った後には下手なスポーツカーよりずっと濃厚な"やったった感"が得られる。

 新しい7代目ゴルフはボディが低く、大きくなったから、この6代目の「ギュッと凝縮したボディにかしこく広い室内空間」のような清涼感ある実用車とは、ちょっとちがうモノになっている。新型ゴルフを見たことすらない私がいうのもなんだが、新型ゴルフがいかによくデキていたとしても、この6代目がゴルフマニアの間で、歴史に残るヴィンテージとして長く記憶されることは間違いない。

 フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンによれば、6代目ゴルフは「新型の日本発売直前まで売れるだけの在庫は確保してある」という。今回の"TSIコンフォートライン・マイスターエディション"はそんなモデル末期の商品らしく、人気装備を不足なく標準装備した買い得仕様。この価格とデキを考えれば、国産車・輸入車を問わずに、ゴルフに比肩できる同クラス車は日本にはない。

 だから、6代目ゴルフを今あえて買って、長く乗るのはアリ......というか、それこそモノのわかったマニアのツボ。そうすれば、新型ゴルフが改良されるたびに「ゴルフがまたよくなった、ぐやじぃ~!」なんて心を乱されることもなく、時間が経つほどに「この時代のゴルフってよかったよねえ」と周囲のクルマ好きに讃えられること請け合いである。


【スペック】
VWゴルフTSIコンフォートライン・マイスターエディション
全長×全幅×全高:4210×1790×1485mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1290kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1389cc
最高出力:122ps/5000rpm
最大トルク:200Nm/1500-4000rpm
変速機:7AT
10・15モード燃費:16.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:279万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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