上村彩子アナ、スポーツ報道の原点は母への"怒り"。ノムさんが教えてくれたこと、サッカー日本代表の恐怖の取材も振り返る (4ページ目)

  • 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

 それまでに『S☆1』や『SUPER SOCCER』の取材で私を含めた取材陣が何度も会場に行ったり、お話を聞いたりしていたからこそ、本来なら断られてもおかしくないインタビューに対して丁寧に対応してくださったのだと思います。私自身もつらく切ないインタビューでしたが、その気持ちをぐっと押し殺して、もっとつらく悔しい思いをしているふたりと向き合うことができました。昌子選手の「いずれこのシーンを意図的に見られるようになりたい」という言葉が印象に残っています。

 継続して現場に足を運び、選手とよりいい信頼関係を築いていく大切さを再確認できたインタビューでもありましたし、一方でどんなにつらかったり、聞きにくいことでも、「今、聞いておくべきこと」、「今伝えるべきこと」を追い求めるメディアの使命を痛感した瞬間でもありました。

 ちなみにこのインタビューは、2018年7月に、川島選手と昌子選手が語る「13秒の真実」としてお届けしました。

 そして実は、その5カ月後にはNHKでも「ロストフの14秒」と題して、あの高速カウンターのシーンについて放送されていました。この1秒の差は、カウンターを受ける直前の本田圭佑選手のコーナーキックの時間を入れているかいないかの差なんです。

 TBSは帰国直後の選手たちの表情や胸の内を伝えることを重視し、一方でNHKは選手たちの気持ちの整理もついたうえで相手であるベルギーの選手にもインタビューし、いろいろな考えや想いを引き出していて、どちらも意義深い内容の放送となっていました。

 他局とはライバル関係ではありますが、みんな日本がW杯ベスト8以上に駆け上がる未来を夢見ていて、スポーツの魅力を多くの人に届けたいという気持ちも同じです。私が母親に言われた言葉、たった「10数秒で終わっちゃう」シーン。でも、その10数秒に眠る奥深さをメディアによってさまざまな目線や角度から楽しむことができたんじゃないかと思います。

 今あらためて振り返ると、こんなふうにスポーツを楽しめる人生になって本当によかったなって思います。もともとミーハーな性格で、表面だけをなぞってスポーツを見ていた自分がいましたが、5年間でその本当の楽しさがわかったように思います。W杯や五輪など、いろんな会場でさまざまな競技を見て、たくさんのアスリートや解説者の方とお話しすることができました。番組を離れても、私の中からスポーツが消えることはありません。これからも、新たなカタチでスポーツを存分に楽しみ、また伝えたいことを追い求め続けます!

■プロフィール 
上村彩子(かみむら・さえこ) 
1992年10月4日、千葉県生まれ。
【担当番組】 
地上波:『報道特集』、『Nスタ』(水・木)、『JNNニュース』(木)、『ひるおび』内ニュース(木)、ほか 
ラジオ:『JUNK 山里亮太の不毛な議論』ナレーション(木)、『スナックSDGs』(土)ほか

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