SASUKE誕生秘話 総合演出家、乾雅人が振り返る「最初は偉い人から怒鳴られまくり、地獄のような現場だった」 (2ページ目)
SASUKEワールドカップ2024が開催された緑山スタジオこの記事に関連する写真を見る――緑山スタジオへはいつから?
乾 第2回からです。失敗したことをわかりやすく見せるため、水に落ちるようにしたかった。ただホールでは池を掘れないし、プールを作るにも予算がかかる。以前、『風雲たけし城』で、穴を掘っていたことから、緑山スタジオを利用することになりました。
――SASUKEには実にさまざまな職種の方々が参加され、それが大きな魅力となっています。タレント、俳優、アスリート、漁師、靴メーカー営業マン、システムエンジニア......。これらはどのように選考されているのでしょうか。
乾 最初はこちらからお願いし、あるいは書類で選んでいましたが、第6回(2000年秋)からはオーディションを行なっています。基本的に「一業種=ひとり」で合計100名。面接をして、運動能力だけでなく、キャラクターを重視して選んでいます。(運動能力の高い人が選ばれていると)よく誤解されますが、SASUKEは一般の方の頑張る姿を楽しんでいただくテレビのバラエティ番組。視聴者が応援したくなるかが大事ですからね。
――決してスポーツ選手権ではないと。
乾 そう。もしそれを見せるのであれば、アスリートだけを集めればいいわけで。金メダリストが不可能ことを、商店街の有名人がやり遂げることに、この番組の面白さがあるんです。
――さらにそこで集まった方々が次第に友情を育み、共闘するように。その様子も見ていて引き込まれます。
乾 山田さんもそうなんですが、ある時期からSASUKEのセットを自前で作る方が現れてきたんです。そしてそこを練習場として、東京や大阪など各地域の方々が集まり、コミュニティが作られていった。番組サイドが仕向けたわけじゃありません。まさかそんなことになっているとは、ある時期まで僕自身、知りませんでしたからね。普段まったく別の世界にいる者同士が抱き合って喜び合う。それもSASUKEの面白さです。
――SASUKEは完全制覇を達成することが目的。勝敗を決するものでないことが大きいのでは?
乾 そのとおりですね。その完全制覇がでなければ、全員が敗退なわけです。出場者同士はライバルじゃない。目標を達成するために戦いあう、いわば部活の仲間や先輩・後輩みたいな関係なんです。ともに励み、アドバイスを送り、情報を共有する。友情が芽生えるのは自然なことなんですよね。
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