塩浦慎理がコンパクトな身体で日本新。入院→泳ぎの見直しが功を奏す (2ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 大会6日目男子200m平泳ぎ決勝。日曜日で満員の会場は、大会前から世界記録更新が目標と公言していた渡辺一平が出場する最終種目に向けてボルテージは高まっていた。

 最初の50mは世界記録とほぼ同じタイムで入り、100mターン時には世界記録を0秒54上回った。150mでも0秒59上回っている。このままいけば記録更新、しかし最後の50mは疲れが見えて従来の世界記録時のラップタイムより0秒8遅い記録となり、2分07秒02でゴール。世界記録には0秒35及ばなかった。

 しかし、150mまではみごとな泳ぎだった。

 レース前、渡辺を担当する奥野景介コーチに話を聞くことができた。

 奥野コーチはリオ五輪以降、トレーニングは継続して来たが、東京五輪までの4年間を考えた時に、最初の2年、つまり2017年・2018年の2シーズンは、「リオまでとは違うやり方での強化」をするように心掛けて来たという。それは新たな方法にチャレンジすることでもあるが、一方でリオ五輪で見えた「結果の出る方法」を温存することでもある。

 4年という時間を考えた時に、同じ練習を4年続けることは選手のメンタル的にも負担になる。例えば50m×20回や100m×20回オールハードなど、古典的でトレーニング負荷も高く、精神的な負担も大きいトレーニングなど、やった方がいいが、やること自体が大変なトレーニングは避けて来たという。

 そんな新たな可能性を探る2年間をすごし、今シーズンは前述したような泥臭い練習も再び取り入れ強化して来たそうだ。いよいよ五輪前年となり、強化が本格化してきたということだ。

 渡辺も150mまで記録を上回れたことによって、「ラスト50mの強化」という課題が明確になった。夏までの時間でその課題を克服する時間は十分にあることだろう。本気モードに入ってきた渡辺の泳ぎから今後も目が離せない。

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